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亡き愛猫「テト」は永遠に“うちの子”。たとえ肉体がなくなっても…

亡くなる2日前に“命がけの甘え”

 しかし、穏やかな暮らしはテトちゃんが「扁平上皮癌」と「脳腫瘍」を患ったことで一変。「がんの影響で顎が肥大し、ご飯が食べられなくなったため、最期の2か月ほどは喉にチューブを通して食べさせていましたが、みるみる痩せ細り、出会った頃のようにガリガリに…。  腫瘍に押し出され片目は視力を失い、脳腫瘍の影響でまともに歩けなくなったテトちゃんを診て、獣医師の口からは安楽死という言葉も。  しかし、どんなにフラフラになってもテトちゃんはサイガさんを見つけると必死にすりより、撫でると嬉しそうな表情を見せたそう。その姿を見たサイガさんは、テトちゃんが自分のしたいことを全力でしているうちは命を絶対に諦めないと心に誓いました。  そんなある日、テトちゃんの甘えっぷりが激化。 「普段はベッドの枕元にある猫用のコタツで寝るのですが、その日は僕がベッドに入ると、ほふく前進のように這ってベッドに潜り込んで来た。今から思えば、これは死期を悟ったがゆえの“命がけの甘え”だったのかも知れません」  それから2日後、テトちゃんは天国へ旅立っていきました。  その日、サイガさんは夜勤を終え、早朝に帰宅。家のドアを開けて明かりを点けた瞬間、目に飛び込んできたのは玄関で息絶えている愛猫の姿。玄関タイルと同じくらい冷たくなった身体に触れたサイガさんは、その場で泣き崩れました。 「もしかしたら、野良出身のテトは最後の力を振り絞って外へ出て大地で最期を迎えようとしたのかも知れませんし、玄関で僕の帰りを待っていたのかも知れません。真実は分かりませんが、いずれにせよ冷たい玄関で最期を迎えさせてしまったことをずっと悔やんでいる。あの光景と絶望感は、今でも時々フラッシュバックします。」

亡くなってもずっと愛しい「うちの子」

 もうここにテトはいない――。時間が経つにつれ、残酷なその事実はサイガさんを苦しめました。使っていた物や食べていたご飯を片付けるとき、注文していたグッズが届いたとき、ペット保険からの書類が届いたとき。サイガさんは何度もテトちゃんの不在を突き付けられました。 「ペット保険から『猫の死亡を以って保険の契約を解除します』と書類が来たとき、あぁ、これで全部終わってしまったと思いました」  猫は一般的には「ペット」という位置づけ。ですが、サイガさんにとってテトちゃんはどんな言葉でも語り尽くせない大切な存在でした。 「この10年間のどの思い出にもテトがいる。テトは、違う生き物と共に生きることの大切さと不思議さを教えてくれた。そこには愛や友情、強い絆がありました。この先、僕の人生が何十年続いたとしても一緒に過ごしたあの日々は輝きを失わないまま、心に在り続けます」  最期に立ち会えなかったという後悔は愛猫への想いが強いほど、色濃くなるものです。しかし、10年間愛し愛されたテトちゃんはひとりぼっちで亡くなっていったのではなく、サイガさんの愛に包まれながら安らかに旅立っていったはず。  思われ、愛され、生涯を全うしたテトちゃんはたとえ肉体がなくなっても、ずっと愛猫であり、大切な“うちの子”です。 「今はまだ違う子を迎え入れる気持ちにはなれないけど、いつの日か別の猫にテトと同じか、それ以上の愛を注げたらいいなと思います。それが出来るようになったとき、僕はより強く優しい人間になれると思う。今は焦らず抗わず、そのときを待ちたい」  そう語るサイガさんは、テトちゃんの存在と思い出を抱きしめながら、これからも歩み続けていきます。 「あたしがいないとやっぱりだめね」  そう思ったテトちゃんが姿を変え、再びサイガさんのもとにやってくる日は、もしかしたらそう遠くないかもしれません。 <文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
古川諭香
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291
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