「高校時代からの親友3人と平日夜に飲む機会があり、サプライズで結婚祝いをもらいました。ペアのワイングラスと、僕が高校時代にすごく好きだった、あるTVアニメシリーズのDVDボックスです。すごく嬉しかったので上機嫌で帰宅し、志津に『DVD、ちょっと観てみる?』と軽く提案しました。全話観るということではなく、プレゼントを開けたいから少しだけ再生してみたい、というニュアンスです」
すると、志津さんが急に不機嫌になった。
「『
観るわけないじゃん』と冷淡に言い捨てられました。僕は『あ、うん、全部観るってことじゃなくて、ちょっと観てみたいなって……』とあたふたしながら言うと、『
アニメ? オタクじゃん。なにそれ』」

※写真はイメージです(以下同)
その日はそれで終わった。しかし数週間後のこと。
「志津の希望でルンバを買ったんですが、床に物が置いてあると掃除効率が悪くなるので、今まで床置きしていたものをちゃんと収納しようという話になりました。でも、どの部屋のクローゼットも棚もすでに満杯です。それで志津は、『この機会に、もう読まない本や使わない電化製品を処分しよう』と提案してきました。そこで彼女が目をつけたのが、テレビ台の引き出しにしまってあった例のDVDボックスです。
志津は『
場所とるから捨てようよ。観たい時にレンタルすればいいじゃない』と言ってきました。親友からのプレゼントなのでさすがに抵抗しましたが、恐ろしい形相でこちらを睨んできたので、あきらめて捨てました」
仲本さんはこの時の気持ちを、「志津が怖かったから捨てたのではない」と力説した。
「志津は僕に不満をぶつけるとき、ただ怒るだけではなく、『
なんて甲斐性がないんだろう、本当にしょうもない男ね、あなたにはほとほと失望したわ』みたいな目をしてくるんです。そんな目をされて迫られると、志津の希望を拒否する自分がものすごく卑怯で、矮小な人間なんじゃないかって思えてくる。
これくらいの難題はのみ込んでこそ大人物だ、みたいなプライドを、巧妙にくすぐってくるんですよ」
それは、一種のマインドコントロールではないのか?
「そうかもしれません。不快感を僕にぶつけて泣き叫ぶ志津に対して、僕が不服なんかをたれるのは人道的にありえない……って気持ちにさせられるんです。罪悪感を植え付けられる、というか」