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Vol.16-2 離婚した妻が包丁を手に「金貸せーっ!」。ホラーのような離婚劇の結末は…

家財道具一式を奪おうとした元妻

「年が明けて1月の4日だったか5日だったか。また虫の知らせがして、マンションに行ってみたんです。すると、またもドアが開いていて……中を見ると、赤帽の人が荷物を運び出そうとしているところでした」 写真はイメージです 亜子さんの仕業だった。大家に「妻ですが、鍵をなくしてしまった」言って鍵を借り、筒本さんに黙って大型テレビやパソコンなど、家財道具一式を運び出そうとしていたのだ。無論、その家財道具はすべて筒本さんの所有物。しかしタイミング良く、亜子さんは部屋にいなかった。 「とりあえず赤帽を帰してマンションの外に出ると、ちょうど亜子が道の向こうからこちらに戻ってくるところでした。それでまた警察に電話して来てもらいました」  亜子さんは警察に“連行”され、以降、2度と筒本さんの前に現れなかった。あっけない幕切れである。 「その後、亜子の父親から相談の電話が来ました。亜子をどうすべきかと。僕は、『今は正気じゃないので、身の危険を感じたら入院させた方がいい』と伝えました。その後しばらく経ってから、措置入院したという連絡が彼から入ったのですが、呆れたことに『とにかく早く迎えに来てほしい』と言われたんです。  既に僕は離婚していましたし、復縁どころか二度と関わりたくない。この人は何を言ってるんだろうと。それほどまでに娘を誰かに押し付けたい、厄介払いしたくて必死だったんですよ。最後まで」

後悔はあるが、反省はない

 筒本さんは「交際中からメンタルが不安定だとは承知していたが、ここまでのモンスターになるとは思ってもみなかった」と、地獄の3年間を総括した。 「亜子と仲がよくなりかけた頃、パニック障害を患う男の友人に相談したことがあるんです。彼は『付き合うなら大変だと思うよ』と。あの言葉をもっと重大に考えていれば……。亜子が併発していた精神疾患について、当時の僕はあまりにも無知でした。上辺だけわかったつもりになっていてもダメ。病気の人と深い仲になるには、相当な覚悟が必要です」 「亜子さんの病気についてもっと知っていれば、結婚しなかったですか?」と聞くと、筒本さんは「そうですね」と即答し、つぶやいた。 「“違う世界”というのがあるんです。“関わっちゃいけない世界”というのが……」  では、「関わっちゃいけない世界の住人たち」は、一体どうすればいいのだろうか。我ながら卑怯な問いだが、筒本さんは少しの沈黙を置いて、こう答えた。 「どうすればいいんですかねえ……。いずれにしろ、病床の父親と同じセリフを昔の僕に言ってやりたいですよ。『お前、あの女はやめとけ』って」  別の話題を探そうとした矢先、筒本さんが先に口を開いた。 「……あのね、正直“学び”にはなってないんですよ、亜子との結婚生活は。よく『失敗から学ぶ』とか言うけど、そういうふうに考えたことは一度もありません」  やや開き直ったような言い方だ。「つまり……?」と言葉を促してみた。 「僕は反省してないってことですよ。自分に悪い点があったから良くない結婚をしてしまったのかと聞かれれば、そうではないということです。浮気したわけでも、亜子に不義理を働いたわけでもない。亜子が毎日のように死ぬ死ぬと言っていた時に僕が思っていたのは、人間、不幸というのはなんの脈絡もなく訪れるんだってことです。因果応報じゃないってこと
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「失敗」ではなく、「天災」
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