那須さん演じる道史は、愛情を暴走させる母に悩む姿が印象的でした。
怜悧で知的な彼は、よく冷えたマスクメロンのよう。とっつきにくいようで、実は甘くなめらか。メガネの奥に隠した瞳のきらめきも、冴えたメロンのしずくを思わせます。
浮所さん演じる篤は、自分ひとりで痛みを抱え込む寡黙で優しい少年です。
その姿は、みずみずしい愛情を固い皮で覆ったオレンジさながら。こわばった心がほぐれて見せた笑顔は、甘くさわやかな香りさえ感じられそうな、それは美しいものでした。
藤井さん演じる明彦と、金指さん演じる和彦は、二卵性双生児で、町の実力者の息子です。
兄は理系の才を、弟は美術の才をたわわに実らせたふたりは、豊潤なピオーネとマスカットにたとえられそう。まだ底知れぬ彼らの魅力がどのようにほとばしるのか、今後が楽しみです。
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フルーツのような少年たちの未熟さを、戦争の痛みを知る三平が導き、三平の切なさを少年たちの素直さが救う。三平は、ひたすら戦争の悲惨さを訴えるようなことはせず、現代の暮らしも受け入れながら、物の見方や心の持ち方を教え……本作では、大人と子供のあるべき補完関係が、やさしくあたたかく描かれているのです。
どこかノスタルジックで、忘れえぬ夏の物語。この夏をこえてどこまで輝きを増すのか、美 少年の成長から目が離せません。
<文/みきーる>
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