心に巣くうマイナス部分で惹かれあったものの、いざ生活をともにしてみるといろいろな違いがあった。そしてその違いをお互いに納得できるほどの人間関係がそもそも築けていなかった。
「仕事の合間を縫ってデートして、相手との距離を縮めていって結婚したほうがよかった。つくづくそう思いました。彼は自分の分の洗濯はするけど私のはしてくれない。私が少し時間ができたので、週末、一緒に買い物に行っても彼が買うのはレトルトや冷凍食品ばかり。
『一緒にパスタでも作ろうよ』と言ったら、パスタ茹でてレトルトソースかけたほうがおいしいよって。外食はいいんですって。プロの仕事だから。
たまに近くの居酒屋に行ったりしましたけど、そうなると私たち、会話がないんですよね。彼はゲームが大好きだけど私はほとんどしない。私は映画館で映画を観るのが好きだから誘っても、『ごめん、めんどうだからひとりで行ってきて』と」
一緒にいる意味がわからなかった。そもそもどうしてあんなに盛り上がって結婚したのかも思い出せなくなっていた。たった半年で。
「婚姻届を出して半年たったとき、『私たち、このまま結婚している意味がある?』と聞いたら、彼は『そうだね』って。それですぐに離婚しました。友だちにはウケましたね。スピード結婚にスピード離婚。何も考えてなかったみたいで恥ずかしいです(笑)」
ただ、あの怒濤のような1年弱を、ヤスコさんは後悔していない。自分の中で情熱がほとばしって結婚に至ったのも事実だし、彼との関係を築けなかったのも事実だが、そういう経験をしたことで、これからまた人生をやり直すことができると感じたという。
「何かに突き動かされるような情熱が自分の中にあると確認できたのがうれしかった。でもその激情に巻き込まれて冷静さがなくなってしまった。次は出会ったら、ゆっくり知り合っていこうと思っています」
勢いや情熱にかられて婚姻届を書いてしまう人は少なくない。もちろん、それも悪くはないが、すぐに離婚というリスクを考えれば、事前に一歩踏みとどまって時間をかけてみてもいいのかもしれない。
―シリーズ「結婚の失敗学~相手選びの失敗」―
<文/亀山早苗>
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