亀梨和也『事故物件 恐い間取り』は、恋愛映画としても楽しめる
<ジャニヲタ歴20年・みきーるのJ-ウォッチ>
亀梨和也さん主演映画『事故物件 恐い間取り』を観てきました。
平日の夕方の回に入りましたが、“おひとりさま”は意外と少なく、男子高校生のグループや、カップル客が目立ちました。やはり皆、ひとりで“事故物件”を内見するのは恐かったのかもしれません。
さて、本作は“事故物件住みます芸人”の松原タニシさんの著書を原作としており、亀梨さんはタニシさんを投影した売れない芸人・山野ヤマメ役を演じています。
最初こそ、おずおずと事故物件に越していたヤマメですが、しだいに“事故物件慣れ”してきて、新作のスイーツでも選ぶように次なる物件、しかもなるべくヤバそうな部屋を借りるようになる変化が、まず恐い!
売れない、注目されないことの恐ろしさが怪奇現象の怖さを凌駕し、恐い目に遭うほど仕事も入る――芸人としての余裕も出てエスカレートしていくさまが、悪霊(?)の思わくに乗せられているようで、また恐い!
自分を思ってくれる人の愛情や友情を無碍(むげ)にしていると自覚しながらも、抜けられぬ葛藤の苦しみを、亀梨さんが曇り、揺れるまなざしの演技で見事に見せています。
本作の監督・中田秀夫さんはホラー映画の傑作「リング」も手がけていて、同作では“呪いのビデオテープ”が恐怖のゲートとなりました。
今、ビデオテープを手にする機会はだいぶ少なくなりましたが、部屋、間取りというのは人が暮らしていく上で必ず関わるもの。“そこに住む人を媒介に恐怖が引き継がれていく”という概念は、逃げ場のない恐ろしさを喚起します。
そんななか、ヤマメの纏うユーモラスな衣装が、恐怖のもたらす非現実感とマッチして絶妙なバランスを保っています。派手めのストライプだったり、オレンジと紺の切り替えだったり、芸人らしいワードローブを亀梨さんがどこかキュートに着こなしていて、ファッション面でも楽しめるのです。特に茶色のもこもこのコートはよくお似合いで、根のやさしいヤマメの性格を表しているように思えます。
また、本作でヤマメは、彼のファンで不思議な力を持つ女性・梓(奈緒さん)に思いを寄せられますが、接し方や呼び方など、徐々に変化する彼女への態度も、亀梨さんが柔軟な演技でしっくり見せてくれています。おたがいがおたがいにとって、譲れない“物件”だったのでしょう、この、ヤマメと梓の関係は応援したくなる温かなもので、この点において、恋愛映画として楽しむこともできるのではないかと思います。
事実、恋人と来ている方も多いですし、デートムービーとしても秀逸といえましょう。
――終映後、「なんとか恐怖に耐えた!」と安堵して席を立とうとしたら、下半身がずうん!と重くなっていて戸惑いました。平気なつもりでしたが、思った以上にダメージを受けていたようです。何かが、私の身体に“引っ越して”きたのかもしれません。
「ホラー大好きだし、ひとりで亀ちゃんにひたりたい!」という人はいいのですが、「ちょっと苦手かも……」という方は、どなかたと一緒にご覧になることをお勧めします。誰も、“連れて”来ませんように……!
<文/みきーる イラスト/二平瑞樹>
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みきーる
ジャニヲタ・エバンジェリスト。メンタルケアカウンセラーⓇ。女子マインド学研究家。応援歴20年超のジャニーズファン。女心を知って楽しく生きるためのライフハック“女子マインド学”を提唱。著書に『ジャニ活を100倍楽しむ本!』(青春出版社)『「戦力外女子」の生きる道』他。Twitterアカウント:@mikiru、公式ブログ:『ジャニヲタ刑事!』