そんな生活をしていたらストレスがたまる。レイコさんの心に隙ができた。昨年の春のこと、気になる男性ができてしまった。

「もちろん恋などする気はなかった。だけど仕事関係で知り合った8歳年上の男性と、仕事の延長で食事に行くことになってしまったんです。どうにもならなくてちょうどそのころ近所に住むようになった姉に子どもたちのことを頼みました。子どもたちのことを気にしつつも、彼と過ごした時間が楽しかったんですよ。それ以降、プライベートでも彼との時間をなんとか作り出そうと必死になっている自分がいました」
とはいえ、たびたび姉に頼むわけにもいかない。
彼女は週末土曜日に出勤だと偽って彼と会った。罪悪感はあったが彼と会うのもやめられなかった。
「しばらくの間、土曜日出社になりそうなんだけどと夫には言いました。すると夫は気乗りしない声で『わかった』と。子どもたちには食事を作っておいたし、上の子はレンジでチンすることも覚えていたので飢えることはないだろうと思って出かけていました」
何度かそんなことがあった。ある土曜日、夜早めに帰宅すると、夫が慣れない手つきで料理を作っていた。
そして次の土曜日、帰宅すると水回りがピカピカになっている。

「どうしたのと聞いたら、2時間だけプロに掃除を頼んだと。数千円でやってくれたよって。
一度、とことんきれいにしておけばあとがラクなんじゃないかと思ってと、夫が照れたように笑ったんですよ。それを見て、私の中で突っ張っていたものがガラガラと崩れていった。思わず泣いてしまいました」
夫に対して常に肩肘を張っていた頑なな気持ちが一気に崩れたのだという。本当はこの人ともっとうまくやっていきたい、もっと家族で楽しい時間を過ごしたい。レイコさんの本音はそうだったのだ。そのことに自分で初めて気づいたのだという。