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酒グセの悪い私にコワイくらい刺さった…奇才が描くアル中闘病漫画『アル中ワンダーランド』

「ごめんなさい神様飲んでしまいました…」があまりに痛切

 文庫版『アル中ワンダーランド』収録のおまけ漫画「その後のアル中」では、作者が断酒後にスリップ(断酒中の患者が再び飲酒すること)してしまった時のエピソードが描かれている。  本の宣伝のために様々なメディアに出演し、『週刊SPA!』では水着のグラビアにも挑戦した作者。しかし、ネット上の誹謗中傷が引き金となり、お酒に手を出してしまう。 神社で「ごめんなさい神様飲んでしまいました…約束したのに…ごめんなさい」と謝るシーンが、あまりに痛切で胸にせまる。
まんきつ『アル中ワンダーランド』文庫より

まんきつ『アル中ワンダーランド』文庫より

 カウンセリングで生きづらさの根源と向き合うようになり、現在は「お酒ではない別の抜け道を通るようになった」という。「その後のアル中」で描かれている線はシンプルで柔らかく、初期のヒリヒリするような緊張感はもはや見られない。作者の心情の変化が、絵柄にも表れているようだ。

その後サウナにハマった『湯遊ワンダーランド』

 また、まんきつ氏の『湯遊ワンダーランド』(全3巻)は『アル中…』のその後を描いた作品であり、断酒後の作者がサウナにハマっていく様子を、弟夫婦やサウナの常連たちとの交流と共に丁寧に描いている。 『湯遊ワンダーランド』の作者は常に新しい驚きや喜びに満ちていて、読んでいるこちらも楽しくなる。お酒がなくなったら、この世界が急に色褪せたつまらないものになるのではないかと怖がっている私に「酔わなくても世界はこんなに豊かで面白い」と優しく諭してくれたのが、この作品だ。
まんしゅうきつこ『湯遊ワンダーランド』

まんしゅうきつこ『湯遊ワンダーランド』

「楽しい」「美味しい」といったささやかな喜びも、「いつスリップするかわからない」という恐怖と闘う作者だからこその説得力がある。  文庫版『アル中…』を読むことで『湯遊…』の面白さに深みが増し、『湯遊…』を読むことで文庫版『アル中…』の主人公・きつこをますます応援したくなる。2作品セットで読むことをオススメしたい。

初めてアルコール外来に初診の予約を入れることができた

 アルコール依存症患者は、国内に推定80万人いると言われている。お酒以外の抜け道や癒しを見つけたというまんきつ氏は「この本が受診のきっかけになってくれたら嬉しい」と語る。  私は、文庫版『アル中…』と『湯遊…』に背中を押してもらい、初めてアルコール外来に初診の予約を入れることができた。もし自分のお酒の飲み方に不安を感じている方がいたら、この2つのワンダーランドを手に取ってみて欲しい。
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まんきつさんからのメッセージは…
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