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宇垣美里「どんな抑圧にだって負けるもんか」/映画『パピチャ 未来へのランウェイ』

 元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。
宇垣美里さん 撮影/中村和孝

撮影/中村和孝

 そんな宇垣さんが公開中の映画『パピチャ 未来へのランウェイ』についての思いを綴ります。
映画『パピチャ 未来へのランウェイ』

映画『パピチャ 未来へのランウェイ』

●作品あらすじ:1990年代、アルジェリア。ファッションデザイナーを夢見る大学生のネジュマは、ナイトクラブで自作のドレスを販売しています。  けれど武装した過激派のイスラム原理主義勢力の台頭によりテロが頻発する首都アルジェでは、黒いヒジャブ(イスラーム教徒の女性が頭や身体をおおう布)の着用を強制するポスターがいたるところに貼られ、銃を持った男性が車を検問するように。  従うことを拒むネジュマはある悲劇的な出来事をきっかけに、自分たちの自由と未来のため、命がけでファッションショーを行うことを決意します―。  この作品は、アカデミー賞の国際長編映画賞アルジェリア代表に選ばれながらも、本国では上映禁止になりました。自由を得るためにファッションで抵抗し闘うヒロインたちの物語を、宇垣美里さんはどのように見たのでしょうか?

他人事と思えない、抑圧と闘った少女たちの命がけのファッションショー

『パピチャ 未来へのランウェイ』より

『パピチャ 未来へのランウェイ』より

 寮をこっそり抜け出してクラブでダンス、気の置けない女友達と部屋で大声で歌って隣人に壁ドンされたり、海で遊んだり、男のコにときめいたり。なんてキラキラと眩しい青春映画の一コマだろう。でも、そんなささやかな日常すら、’90年代のアルジェリアに生きる彼女たちにとっては命がけの行為だった。  街角どころか大学構内にまで“女の正しい服装”を啓蒙するポスターが貼られ、バスの中では銃を携帯したイスラム過激派によってヒジャブの着用を強要される。これらはすべて監督の実体験や史実を基にしているというから背筋が凍る。  抑圧された地獄のような環境下だからこそ、女友達との連帯にどれほど救われたことか。特にファッションショーのシーンはあまりにも美しく、どんなハイブランドのパリコレよりも華やかに見えた。
『パピチャ 未来へのランウェイ』より

『パピチャ 未来へのランウェイ』より

 怖い国もあるんだね、なんて他人事のように言えやしない。薄着の女は痴漢されても仕方がないと言われるジェンダーギャップ指数121位の日本に私は住んでいるのだから。  姉を、友を、学びやを奪われ、それでも炎を宿し続ける彼女の瞳に、自分がずっと抑えてきた慟哭(どうこく)が蘇(よみがえ)る。私の足を、胸を、髪を返せ。それは性的に消費されるためのものなんかじゃない。誰かの生き方を否定しているわけじゃない。ただ自分らしく生きたいだけ。
映画『パピチャ 未来へのランウェイ』

『パピチャ 未来へのランウェイ』より

 パピチャとはアルジェリアのスラングで“常識にとらわれない自由な女性”を意味するそうだ。未来のために闘った彼女たちは紛うことなきパピチャ。私もそんなパピチャになりたい。何度踏みつぶされても、唇を噛みしめ立ち上がってみせる。どんな抑圧にだって負けるもんか。 パピチャ 未来へのランウェイ』 ’19 年/フランス・アルジェリアなど合作/1時間49分 監督/ムニア・メドゥール 配給/クロックワークス ©2019 HIGH SEA PRODUCTION-THE INK CONNECTION-TAYDA FILM-SCOPE PICTURES-TRIBUS P FILMS–JOUR2FETE-CREAMINAL-CALESON-CADC <文/宇垣美里> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
宇垣美里
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。
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