Vol.17-1 妻に浮気された夫、慰謝料請求しても1600万円の赤字になった落とし穴
浮気されたのに…1600万円の赤字
結局、谷口さんは離婚裁判を起こし、本人尋問で出廷した明子さんとA夫の前で、最後の切り札だった浮気メールのデータを証拠として提出。それが決定打になって明子さんの不貞が認められ、離婚が成立した。結婚から11年目の終止符。谷口さんは39歳になっていた。
「慰謝料は相場通りで、明子から100万円、A夫から100万円の、合計200万円。ただ、僕としては1600万円の赤字でした……」
その理由は、財産分与と件の婚費だ。夫婦が離婚した際の財産分与は、結婚生活中に夫婦が築いた共有財産をきっちり二等分する。これは、ふたりの収入差や不貞を働いたか否かには、一切左右されない。
共有財産には、結婚“後”に購入したマンションも当然含まれる。谷口さんは親に借金し、マンション価値の半額、預貯金の半額、海外赴任中に発生した婚費2年分を、明子さんに支払った。その後マンションを売却して親に借金を返済し、残りのローンも精算したが、結果として収支は1600万円ものマイナスになってしまったのだ。
「もとを正せば、明子の浮気です。なのに、彼女はたった100万円の慰謝料を支払っただけ。僕が海外駐在勤務になって以降、2年分の婚費をがっぽりせしめていますから、かかった弁護士費用を考えても経済的なダメージは小さい。僕のほうは1600万円もお金を失ったのに……」
「小さい男」だと思われたくなかった
稲田豊史
編集者/ライター。1974年生まれ。映画配給会社、出版社を経て2013年よりフリーランス。著書に『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)、『オトメゴコロスタディーズ』(サイゾー)『ぼくたちの離婚』(角川新書)、コミック『ぼくたちの離婚1~2』(漫画:雨群、集英社)(漫画:雨群、集英社)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)がある。【WEB】inadatoyoshi.com 【Twitter】@Yutaka_Kasuga


