谷口さんは、さらに恐ろしい話を続けた。
「義父は自分の連れ子、つまり葉月の腹違いの姉と兄を、幼い頃からネグレクトし続けていたそうです。その裏では、たぶん義母が糸を引いています。実の娘である葉月を、排他的優位に可愛がりたかったのでしょう。義母は義父までも精神的な支配下に置いていたようです」
その狙いとは?
「義母は葉月を一生手元に置いておきたい。ただ、そのためには、娘と一生暮らしていけるだけの経済力が必要ですよね。
そこで義母は考えました。娘と腹違いの姉と兄を、遺産相続の対象から外そうと」

にわかには信じがたいが、彼女はそれを実行する。
「当時、葉月の姉と兄は、葉月の両親と養子関係にありましたが、義母は義父を通じて彼らを説得し、養子関係を切ることに同意させたんです。義父は義母の言いなりだったので、それができました」
これで、両親の財産はいずれすべて葉月さんに行く。経済的な安心感によって、娘を囲ったわけだ。
「義母が葉月の結婚相手として僕にOKを出したことにも、説明がつきます。僕は名の知れた大手電機メーカー勤務ですから、高給取りであることは想像がつく。
つまり、子供を作って離婚してしまえば、子供が成人するまで養育費ががっぽり取れる。養育費の金額は義務者、つまり僕の収入に比例しますからね。葉月が働きに出なくても、親子の定収入が高め安定で約束されるんです。僕は、義母が娘を一生囲うための資金源として利用されました」
葉月さんに離婚を決意させるため、葉月さんの母親は、葉月さんが帰国してから1ヶ月の間に、谷口さんに対するすさまじい悪口を吹き込んでいた。
「義母は、僕がクスリをやっているとか、勤労意欲がないとか、性的嗜好に関して……口にしたくもない中傷を、裏で葉月に吐き続けていたみたいです。すべて根も葉もない嘘ですが、葉月はそれを信じた。かつて葉月の友達を排除したのと同じ方法、マインドコントロールです」
しかし、現在の谷口さんの苦悩は、お金のことではない。
「
子供の親権がね、どうしても取れないんですよ」
<文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会>
※続く#3は、12月7日に配信予定。