Vol.18-1「僕は彼女の金ヅルでした」若すぎる女子に“釣られた”男の異常な結婚
「貧乏って、そういうことなんですよ」
ひとしきり笑ったあと、正太さんは表情を戻し、向き直って言った。
「そうでもしないことには、あの家から逃げ出せないと踏んだんでしょうね。あのスラム街みたいな近所と、荒れ放題の家の中を見て、よくわかりました。貧乏ってそういうことなんですよ。ナオミは、早々と結婚して家を出たふたりの姉みたいに、早くここから逃げ出さなければと焦っていました。
ナオミにとって僕は金ヅルでしたけど、自分を家から出してくれる切り札でしたし、おそらく父親代わりでもありました。娘を殴る父親なんてね、ほんと……ありえないですよ。ナオミの性格は最悪でしたけど、それだって家庭環境のせい。貧乏ってね、そういうことなんですよ」
「貧乏ってそういうこと」と2度も重ねる正太さん。そこで思い出した。正太さんを紹介してくれた女性編集者の言葉を。
「正太、大学2年の時にお父さんがリストラされて、大学の授業料が払えないから大学辞めなきゃいけないかもって言ってきたんです。当時はサークル同期の間で大騒ぎになりました」
しかし取材中、このことは正太さんの口から一切語られなかった。
子供が欲しくなった
稲田豊史
編集者/ライター。1974年生まれ。映画配給会社、出版社を経て2013年よりフリーランス。著書に『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)、『オトメゴコロスタディーズ』(サイゾー)『ぼくたちの離婚』(角川新書)、コミック『ぼくたちの離婚1~2』(漫画:雨群、集英社)(漫画:雨群、集英社)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)がある。【WEB】inadatoyoshi.com 【Twitter】@Yutaka_Kasuga


