それから、豆まきは朝・昼・晩のいつするのが良いのでしょう?

「それは、夜です。
昔は日没で1日が終わり、明るくなるまでは翌日とどっちつかずの時間帯と考えられていたので、厄払いにピッタリなんです。妖怪やおばけが出るのがたいてい夜なのも、夜が怪しい時間帯だからです」
話題の作品『鬼滅の刃』でも鬼が活動するのは夜ですもんね。節分には「年の数だけ豆を食べる」とも言われていますが、これにはどんな意味がありますか?
「
豆の生命力をいただくという意味です。昔は数え年だったので、誕生日ではなく1年の最初にみんなで平等に年を取りました。穀物の霊力を身体に取り入れることで、歳を重ねたのです。節分・立春は豆の霊力、大晦日・正月はお餅でお米の霊力と、ここでも二つのお正月は対応しているんですね。両方とも昔は「年取り」といったんですよ」
それと、恵方巻もすっかり節分の定番になりましたが、その起源について先生はどう思いますか?

「恵方巻は、大阪など関西から全国に普及していった新しい習慣ですね。戦前には大阪鮓商組合が、戦後には大阪海苔問屋協同組合が節分に巻き寿司を食べることを宣伝したという情報があるようですが、その時点ではまだ全国規模にはなりませんでした。やはり、1990年代からコンビニエンスストアで商品化されたことが人気と普及への発端でしょう」
こんなに定着した理由はあるのでしょうか?
「それは、『恵方』という昔ながらの信仰と言葉を巧みに取り入れたからだと思います。恵方は、正月や節分に恵方の社寺に詣る『恵方詣(えほうまいり)』という行事にちなんだネーミング。
縁起が良さそうで伝統を感じられる名前が、人々に好意をもって受け入れられたのでしょう」