でも、どうして豆なんですか?
「豆には、『
豆の霊力で鬼を払う』と『
鬼に豆をたべさせてやる』のふたつの意味があります。五穀(米、麦、ひえ、あわ、豆)には、禍を払う霊力があると信じられてきたんですね。そして、まいた豆を鬼が食べて帰ってくれれば、人間の方まで鬼も災いもやってこないわけです」
そもそも、豆まきって誰がいつから初めたんですか?
「明確なスタート地点を知ることは難しいです。
でも古い記録としては、室町時代の『看聞御記』という日記には、応永32(1425)年1月8日の節分の日に「鬼大豆打」とあり、豆をまいていたという記録があります。ただ、仕えていた若侍はその豆まきの役を嫌がったという記事もあります。豆をまくのは厄払いの役だから、穢に近づく行為として嫌がったのでしょう」
現代風に例えるなら、新入社員がトイレ掃除をさせられて嫌がってる、みたいなところでしょうか。それにしても1425年というと、約600年前! そんなに昔から行われていたんですね。
「歴史を振り返ると、京都では室町幕府ができた頃には節分の豆まきが行われ、1400~1500年頃にかけてポピュラーになっていったと考えられます」
五穀に力があるなら、大豆のかわりにお米をまいてもいいんですか?
「お米にも霊力はありますが、それはやめておきましょう。稲の祭りはお正月です。お正月には、前年にとれた新米を使ったお餅を食べますよね。節分は豆を使った祭りですから、道具は間違えない方が良いのです」
面倒臭がらずに大豆を買った方が良いんですね。そういえば、地域によっては落花生をまくところもあるみたいですが、それは良いんでしょうか?
「それは歴史の中での変化と見ていいでしょう。まいたあとも衛生的に食べられるように、殻のある落花生を選んでいるようです。最近では大豆が数粒入った小袋をまくこともありますし、衛生意識の変化が現れているのでしょう」