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Vol.19-1 “東京の病んだ子”に憧れて結婚した男性が見た、想像以上の地獄

父も母も、祖父も祖母も飲む人

「一緒に引き取られた僕の妹なんですけどね、数年前にまだ30代の若さで亡くなったんですよ。肝臓がん、酒の飲みすぎです。ほとんど孤独死でした」  ふと筆者は、「アルコール依存の発症に遺伝的要因が占める割合」について書かれた記事のことを思い出したので、おそるおそる聞いてみた。 「うーん……。たしかに父も母も、祖父も祖母も飲む人でした。僕の地元では、祖母の世代で女性が飲むのは珍しかったんですけど、隠れて飲んでたみたいです。いわゆるキッチンドランカー。いま思うと、祖母は常に酒臭かった。当時はそれが飲酒した人の息の匂いだと、わかりませんでしたが」  子供が生まれても、岩間さんの酒癖は変わらなかった。 「深夜に帰宅しても、結衣は娘に会わせてくれないんですよ。『酒に酔っている人に子供は会わせられない』って。別室にこもって鍵をかけられる」

ある日、警察沙汰に…

 娘が生まれて2年近くが経った、ある日のこと。 「仕事後にファミレスでご飯を食べて、いつものように酒を飲んで、深夜に帰宅しました。そのまま明日の朝食の支度をしていたら、結衣が起き出してきて、『うるさい!』とつっかかってきたんです。それで口論になり、激しい取っ組み合いになりました」  ひとしきりもみ合った後、なんと結衣さんは警察へ電話を入れた。間もなく警官が到着。親子3人でパトカーに乗り、警察署に移送される。そこでの結衣さんの主張は、岩間さんにとって驚くべきものだった。 「結衣は警官に、僕に殴られたと言いました」(次回につづく) <文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会>
稲田豊史
編集者/ライター。1974年生まれ。映画配給会社、出版社を経て2013年よりフリーランス。著書に『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)、『オトメゴコロスタディーズ』(サイゾー)『ぼくたちの離婚』(角川新書)、コミック『ぼくたちの離婚1~2』(漫画:雨群、集英社)(漫画:雨群、集英社)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)がある。【WEB】inadatoyoshi.com 【Twitter】@Yutaka_Kasuga
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