Gourmet

洋食に味噌汁。ご飯に合う料理を出す、という老舗町洋食店の哲学

ついつい足が向いてしまう圧倒的なクオリティ

町洋食

洋風ハンバーグ。丁寧に仕込まれたデミグラスソースや付け合わせを従えた一見オーソドックスなハンバーグの中に強烈な個性が潜んでいる

 誤解を覚悟でいえば、飲食店経営者としての私はともかく、イチ洋食マニアとしての私は、「最適化」がなされていない店のほうに惹かれがちだ。つまり洋食屋の黄金時代であった半世紀前のスタイルを愚直に守り続けている店。  しかし、私は真逆にあるはずのGOTOOにはついつい足が向いてしまう。なぜならそこには圧倒的なクオリティがあるからだ。  その圧倒的なクオリティを感じさせてくれる料理の一つにハンバーグがある。しかしこれは実はある意味「GOTOOらしからぬ」一品でもある。初めて食べたときに私は驚愕した。その体裁自体は、ふっくらと焼き上げられ、ナイフを入れると肉汁がほとばしる、いまの世の中で最も好まれるタイプ。  特異なのはそこから強烈に立ち上る香辛料の香りなのだ。しかもその香辛料はハンバーグで一般的なナツメグではなく、クローブとオールスパイス。聞くとその配合は創業以来のものであるとのこと。往年のハイカラ紳士ならともかく、いまの幅広い客層だとはっきり好き嫌いが分かれかねない個性だ。

変えてはいけないものを守り通すために

町洋食

洋食GOTOO

 しかし、義彦さんはこう語る。 「これがダメって人には他のものを食べてもらえばいいですから」  なるほど、他が最適化されているからこそ、尖った味が一つあっても構わないという自信だ。 「変えるべきものと変えてはいけないものがある」という言葉に一層の重みが増す。変えてはいけないものを守り通すには、変えるべきものは変えていかねばならない。そういうことだ。  この哲学ある限り、GOTOOはいつまでも町の繁盛店であり続けることだろう。 【稲田俊輔】 鹿児島県生まれ。自身も飲食店を手掛ける飲食店プロデューサー。著書に『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』(扶桑社)、『南インド料理店総料理長が教えるだいたい15分!本格インドカレー』(柴田書店) <取材・文/稲田俊輔 撮影/林 紘輝(本誌)>
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洋食GOTOO
東京都豊島区南大塚3-54-1
11~14時、17時30分~20時(ラストオーダー)※水曜はランチのみ、日曜祝日定休
現在の店舗は’01年に改装。イタリアンレストランを思わせるスタイルに
(コロナの影響により営業時間はお店にご確認ください)

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