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「不倫はいいけど、離婚は悪いこと」イタリア人の謎すぎる結婚観

イタリアは離婚率が低い

イタリアは離婚率が低い 印象的なのは、妻のアガタがパオロの浮気を咎めず、「欠点さえも愛している」と言い放つシーン。彼女も罪悪感を抱きながら他の男性と恋に落ちてしまいますが、アガタは、「夫の浮気に耐える妻」という弱い女性では決してなく、「夫の欠点を許すことを選択し、自分の恋もまた選択する」自由で強い女性だと描かれているのも、妻はこうあるべきだという固定観念を破ります。  興味深いことに、「貞節が夫婦愛の絶対条件ではない」という価値観はイタリアの比較的低い離婚率にも表れているよう。例えば、イタリアの1,000人あたりの人口における離婚率(年間離婚届出件数/人口 × 1,000)は“1.51”と日本の1.65よりも低く、イタリアよりも浮気率が若干低いフランスの離婚率は3.54と、イタリアよりもずっと高いのです。(※3)  各国の婚姻率が異なるので単純比較はできませんが、それでも、イタリアは浮気率に対して離婚率が低いと言えるでしょう。この低い離婚率について監督に聞いてみるとこんな答えがありました。

不倫よりも離婚のほうが悪い!?

不倫よりも離婚のほうが悪い!?

『ワン・モア・ライフ!』より

「イタリア人はカトリックなのに不倫に関しては寛容であるとずっと言われています。もちろん社会階層や人間関係によっても違うので一般化できませんが、離婚はイタリア人にとって個人的に大きな意味をもちます。ですから、恋愛よりも家族の絆を優先するのです。イタリアでは著名人の死後に隠し子がよく出てくるんですよ。特に映画監督だと必ずね(笑)」  イタリアでは政治や経済よりも、家族に最も重きをおく価値観があるのだそう。それなのに、愛し合うイタリアの男女がなぜすれ違うのかを疑問に感じ、長年それを題材に映画を撮ってきたそうですが、未だにその答えが見つからないと監督は言います。  最後に、ダニエーレ・ルケッティ監督はこう取材をしめくくりました。 夫婦は変わり続けていくもの「この映画は不倫を正当化する物語ではありません。ただ、夫婦は変わり続けていくもの。その変化を受け入れられることができたら、お互いの絆も強くなる。仕事、育児、そしてこのパンデミック…そういったことがもたらすパートナーの変化を受け入れることにより、力が生まれて先に進んでいける。色々な問題があってもそれが強いエネルギーとなり、カップルの絆が強くなるのではないでしょうか」  不倫や夫婦愛だけではなく、母親と息子の関係、女性のワンオペ育児、世代間のギャップなど誰もが直面する人生のエッセンスをあたたかな眼差しで映し出す『ワン・モア・ライフ!』。自分や他人の欠点を深刻にとらえて悲観的になるのではなく、「人間には間違いがつきもの」だと受け入れて、もう少し楽観的に生きて行こう、という監督のメッセージが込められているような気がします。 【参考】 ※1…2018年版「ニッポンのセックス」- 相模ゴム工業株式会社 ※2…Survey Reveals Which European Country Cheats Most – HUFFPOST ※3…国立社会保障・人口問題研究所-人口統計資料集(2020) © Copyright 2019 I.B.C. Movie <文/此花わか>
此花わか
ジェンダー・社会・文化を取材し、英語と日本語で発信するジャーナリスト。ヒュー・ジャックマンや山崎直子氏など、ハリウッドスターから宇宙飛行士まで様々な方面で活躍する人々のインタビューを手掛ける。X(旧twitter):@sakuya_kono
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『ワン・モア・ライフ!』3月12日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開  配給:アルバトロス・フィルム
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