朝早く起きて弁当を作ってくれた母親に対する感謝の気持ちを示すどころか、こんな風に文句を言われて知美さんも怒り心頭。しかも、夕食のときにも弁当のおかずに対する不満をしつこく言ったあげく、「明日はちゃんと作っておけよ」となぜか命令口調。その態度に彼女の堪忍袋(かんにんぶくろ)の緒もついに切れてしまいます。
翌朝、ご飯を敷き詰めた弁当箱には市販の切り海苔を組み合わせて書いた《バカ息子》の大きな文字。おかずは一切入れず、そのことを知らない息子は、無言で弁当をかばんに入れて部活の練習に行ったそうです。
すると、ちょうどお昼を過ぎたころ、息子さんから「ふざけんなよ!」「何考えてるんだよ!」「それでも母親か!」などの怒りのLINEメッセージが立て続けに届きます。でも、やりとりしてもイライラするだけだと思ったため、返信は一切しませんでした。
「ただ、おかずがゼロじゃかわいそうだと思って、ふりかけを2パック付けておいたんです(笑)。それなのに帰ってきた息子の第一声は、『ババァ、頭がおかしいんじゃねぇか!』ですからね。当時、すでに30代半ばで世間的には確かにおばさんなのかもしれませんが、自分の子供には言われたくないですよ。
けど、この日は息子とやり合うつもりでいたので『もう弁当は作らない。必要な日は自分で作りなさい』と通告。謝ってこなければ二度とお弁当を作るつもりはありませんでした」

息子に作った弁当を再現してもらいました。
その後、母子の会話はほとんどないまま迎えた次の土曜日の朝、部活の練習に出かける息子から「弁当は?」と聞かれますが、「ないわよ。自分で作りなさいって伝えたでしょ」と冷たく言い放つ知美さん。これに対して「じゃあ、パン買うからお金ちょうだい!」と言われましたが、「自分のお小遣いから出しなさい」と取り合わなかったといいます。
「一週間前の事を何もなかったかのようにしてきたのが許せなかったんです。夫には事前に相談しましたが『このくらいやらないとアイツは気づかない』とOKをもらったのでやっちゃえって。
あんのじょう、この日も帰宅後の息子は大荒れで、夫に泣きつきましたが彼はもちろん私の味方。夫からも『最近のお前の母さんに対する態度は目に余る』ってこってり絞られて、最後は少し不満顔でしたけどちゃんと謝ってきたのでこれで手打ちにしてあげました(笑)」
ちなみに息子さんと同じサッカー部には幼稚園や小学校のころから家族ぐるみで付き合っているママ友のお子さんも在籍。この出来事の数日後、「弁当の件、ウチの子から聞いたわよ(笑)」とすっかり広まっていたとのこと。
「ママ友に知られちゃったのは恥ずかしかったですけど、部活の仲間からは『母親をそこまで怒らせるお前が悪いだろ』って冷ややかな反応だったみたいです。その影響かこの一件を境に息子も反抗期も少し治まったので、今ではやってよかったかなって思っています」
お弁当は人の感情を相手に伝えるためのツールではないですが、こんな活用方法があるなんて面白いですね。子供だけでなく夫相手にも使えそうです。
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私がブチ切れた瞬間―
<文/トシタカマサ イラスト/とあるアラ子>
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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。