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がん患者に「かわいそう」と言わないで。乳がんになってわかった“傷つく言葉”

患者にかける言葉は、物足りないぐらいでいい

――本には、友達に「どうせなら、胸を大きくしちゃえ」と言われて、心ほぐれるシーンもありますよね。 藍原:この言葉自体は決していい言葉ではないし、むしろNG言葉の筆頭だろうと思います。ただ、彼女はダンス友達で、以前から二人で「グラマラスなほうがダンス衣装は似合う」という話をよくしていたんですね。その前段があっての会話で。彼女は、がんになったと告げたとき、「かわいそう」「大変だね」など一切なく、これだけを言ったんです。彼女と私の関係性だから励ましの言葉になった。彼女じゃなかったら許さなかったと思います。難しいんですが、患者にかける言葉の何がNGなのかって、その人によるし、関係性によるというのもあります。
がんの記事を書いてきた私が乳がんに!?

『がんの記事を書いてきた私が乳がんに!? 育児があるのにがんもきた』(KADOKAWA)

がんの記事を書いてきた私が乳がんに!?

『がんの記事を書いてきた私が乳がんに!? 育児があるのにがんもきた』(KADOKAWA)

がんの記事を書いてきた私が乳がんに!?

『がんの記事を書いてきた私が乳がんに!? 育児があるのにがんもきた』(KADOKAWA)

――相手との関係性を前提にしても、どんな言葉をかけたらいいのか迷います。 藍原:患者にかける言葉は、物足りないぐらいでいいと思うんです。言葉をかける側って、「私はあなたのことを考えてるよ」というやさしさから、言葉を重ねようとする。でも、患者は別に過剰な言葉は求めてないんじゃないでしょうか。「そうかそうか」「うんうん」だけでいい。もし、続きの言葉が必要になったら、本人からアクセスしてくると思います。  病気の知識がなくても、聞くことはできますから、「何もできないけどさ、話なら聞けるよ」くらいでいいと思います。

「つらい」と言えない人のつらさ

――いっぽうで、藍原さん自身は長い間、がんであることを隠し、「つらい」という気持ちを周囲に出せないでいました。それは、「かわいそう」だと憐(あわ)れまれたくなかったから? 藍原:それもありますが……がん患者に限らず、世の中には「助けて」「つらい」「手を貸して欲しい」と、言える人と言えない人がいると思うんですね。  言える人はまだ少しましかなと思うんです。リアルの友人関係や家族に「つらい」「どうにかして」と吐き出せる人、「#乳がん」などを使ってSNSで誰かとつながれる人、相手は誰にせよ外に出せる人はまずその時点で一歩前に進めている。でも、どうしてもそこにつながれない人がいるわけです。 ――藍原さんは「言えない人」だった。 藍原:そうですね。この本を書きながらなぜ、言えなかったんだろうと考えてみたんですけど、多分、自分で解決するべきだと考えていたんだと思います。これは自分の問題で、自分が解決するべきだと。がんになってるのは私だけじゃない。がんもわりと初期で、さほど進行していないようだし、全摘手術も自分が望んだこと。それで私がつらいなんて言ったら、「世の中にはもっとつらい人がいる」「あなたなんか、大したことない」って言われるんじゃないかって。今となっては、誰が言うんだよと思うんですけど。結構、言えない人の気持ちってそうなんじゃないかなと思います。 ――つらすぎます……。 藍原:もともと、あまり人に自分の心の内を晒せない性格というのもありますが、言えないまま、どんどん閉じ込められていきました。自分の中に不安や恐怖や怒りや絶望が溜まって、どんどんどんどん心のバランスを崩してしまった。そういう人はまず、自分の気持ちを言葉にすることが第一歩。それはどんな形でもいいんですけど、言葉にすると次が見えてきて、どこかにつながれる……のですが、もともと言えない人にとって、それにはとてもパワーがいる。
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つらさを最初に言語化できた意外な場所
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