――藍原さん自身、がんが自分の一部になり、変わったところはありますか?
藍原:自分を労われるようになりましたね。それまでの私は仕事や家のこと、子どものこと、本当にパンパンにスケジュールを詰め込んでいたんです。
ライターとして母親として、もっと頑張んなきゃ、もっと努力しなきゃと考えていました。今では、それは自分の自信のなさだったとわかるのですが、とにかく休まなかったんです。
――それはそれですごいです。
藍原:でも、最近は本当に、だらっとしています。娘が「ママ、今日一日何もしてないけど、それで夕飯、マックとか言うの?」って笑うくらい(笑)。「明日、病院で3時間待ちなので、お母さんはもう今日は何もしません」って、言えるようになりました。
完璧じゃなきゃいけないと思っていたけれど、別にそんなことはないんだって。そこは夫からも「変わったね」と言われますし、「楽しそうだ」とも言われます。

『がんの記事を書いてきた私が乳がんに!? 育児があるのにがんもきた』(KADOKAWA)

『がんの記事を書いてきた私が乳がんに!? 育児があるのにがんもきた』(KADOKAWA)
――この本に対して、夫の反応はいかがでしたか?
藍原:出版前に全部見せたんですが、「そっか。何もわかんなくてごめん」と一言言っただけで、直しは一切、入りませんでした。あと、彼自身は変わらないですね。あ、でも、
何かあったとき「大丈夫?」って、2~3回聞いてくれるようになりました。おそらく、本で「もう1回、聞いてくれたら話せるのに」って描いたからだと思いますけど(笑)。
――(笑)
藍原:私も夫に対して「つらいんだけど」と言えるようになりました。
以前の私は多分、言うか言わないかの2択しかなかった。白か黒か。グレーがなかった。だから、「言わない」「頼らない」と決めたら、誰にも何も言わない。でも、どん底まで落ちて、グレーがあるんだっていうことがわかった。あとは、夫婦で話をして、本のコラムで紹介している「オープンクエスチョン」というのを互いに心がけています。
――オープンクエスチョン?
藍原:オープンクエスチョンは心の専門家も使うコミュニケーション方法で、何か質問するときに、「はい」や「いいえ」では終わらない聞き方です。「熱ある?」と聞いてしまうと、「ある」「なし」の返事で終わってしまいますが、「調子どう?」と聞くと、何かしらの言葉が返ってきますよね。会話が一方通行になりません。これは、病気の人に限らず、どんな方にでも使えるのでおすすめです。

『がんの記事を書いてきた私が乳がんに!? 育児があるのにがんもきた』(KADOKAWA)
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クローズドクエスチョン ⇒ オープンクエスチョン
痛みはある? ⇒ 昨日は痛かったよね。今日はどこか傷んだり、悩んでいることはある?
水飲む? ⇒ 水分は採ったほうがいいよね。何が飲みたい?
退院はいつ? ⇒ 調子よさそうだからもうすぐ退院かな?先生はなんて言ってた?
※『がんの記事を書いてきた私が乳がんに!? 育児があるのにがんもきた』(KADOKAWA)より抜粋
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