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がんは「手術に成功したら勝ち」じゃない。がん患者の長い“その後”

つながれない人へ、かつてつながれなかった私から

――「話を聞くよ」という語りかけですね。 藍原:変化という点では、私は心のバランスを崩しやすいということに気づけたので、今は精神腫瘍科ではありませんが、定期的にカウンセリングへ通っています。もし何かどん底まで落ちるようなことがあったら、心の専門家に相談すればいいと思えるようになった。非常ロープみたいなものですね。安心感があるからでしょうか、周囲からは雰囲気がちょっと柔らかくなったとも言われます。以前はやっぱり、カリカリしてたんでしょうね。
カウンセリング

写真はイメージです

――夫にしろ、カウンセラーにしろ、「つらい」と言えるようになったのは、大変化ですね。 藍原:言葉にすること、つながることで解決できることは多いと知りましたから。でも一方で、言葉にできない、つながれない人の気持ちが、私にはとてもよくわかるんです。言葉にできなかった私がつながれた、まさにその方法を伝えたくて、この本ができました。だから、この本はがんの本ではあるのだけれど、私が変わっていく姿が描かれています。  本は一方通行のメディアです。今、しんどくて、心閉じてしまっていても、この本を読んで、心に染み込んでくれれば、パワーがたまったとき、誰かに伝えてみようかな、つながってみようかなって、思ってもらえたらいいなと思っています。 <藍原育子 取材・文/鈴木靖子>
藍原育子
編集者・ライター。出版社に勤務後、04年よりフリーランスに。10年に長女を出産。13年に乳がんを患い、右胸の全摘手術を行なう。インプラントによる再建、5年間のホルモン治療を経て、現在経過観察中。近年は医療系の記事を中心に執筆活動を行ない、がん保険契約者向け冊子などの企画・執筆も手掛ける。Twitter:@aihara_ikuko
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