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『ミッドナイトスワン』『Fukushima 50』日本アカデミー賞受賞への大疑問

原発事故が起きた原因や責任についての追及がない『Fukushima 50』

『Fukushima 50』 日本アカデミー賞は、東日本大地震による福島の原発事故を題材とした『Fukushima 50』に対しても、助演男優賞、監督賞など複数の賞を授与している。この作品は、事故当時の切迫した状況や、原子力発電所の所員たちの事故対応への決死の覚悟を描く内容だ。本作は当初、故・津川雅彦が持ち込んだ企画だったという。 『Fukushima 50』が批判されているのは、原発事故が起きた原因や責任についての追及がない点である。もちろん、最優秀助演男優賞を受賞した渡辺謙が演じた、福島第一原発の所長・吉田昌郎をはじめ、所員たちの努力や功績は認められるべきものがあるが、そもそも所員が死を覚悟しなければならなかったのは、安全対策への義務を怠っていた東京電力の経営陣であり、2011年までに有効な対策を打たなかった政治にあるのではないか。  事故当時の政権は民主党であり、もちろんこの事態が起こった責任の一端を担わなければならないが、2006年の時点で「全電源喪失はありえない」として、野党による原発の地震対策への提言を拒否していたのは、自民党・第一次安倍内閣の安倍晋三首相自身だった。本作は、この前提が欠落し、所員たちの努力や犠牲を美談としてのみ語るのである。

『永遠の0』と同じく、美談に落とし込む手法

 これは、第38回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『永遠の0』で描かれた構図とそっくりだ。特攻隊員をことさら英雄化することによって、当時の日本軍上層部が兵士を進んで犠牲にしていた事実には、あまり目を向けさせないような内容となっている。  このように、日本で繰り返し行われてきた、特権的な人々の決断によって末端の人々が責任をとらされる構図が存在しながら、それをあたかも無かったことのように漂白して美談に落とし込む手法は、戦中の国策映画を想起させるものだ。
百田尚樹「永遠の0」 (講談社文庫)

岡田准一主演で2013年に映画化された。百田尚樹「永遠の0」 (講談社文庫)

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常軌を逸した原作者の発言が問題視されている
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