――執筆していくうえで、最も描きやすかったくだりと、最も時間がかかったエピソードを教えてください。
写真はイメージです
ひるなま「描きやすさは全体的に変わりませんでしたが、時間がかかったのは(ひるなまさんのバックボーンが描かれる)5話の虐待の話です。
最初はもっと、恨みがましくネチネチとした描き方だったのですが、編集さんのアドバイスでネームの練り直しを二度三度と行い、その当時は正直かなり疲れました(笑)。
でも結果、生々しさを削ぎ淡々とした表現に留めてよかったです。あれは本当に、私の一番描きたいテーマを編集さんが理解し、誠実に原稿を見て下さったおかげだと、あとから痛切に感謝しました」
――漫画を描いて世に出すのだという思いは、入院中、それ以後も大きな力になりましたか?
ひるなま「そうですね。入院中はほぼずっと痛みとの闘いでして、特に術後の全く身動きが取れず虚空を見つめているしかない日などは、動かせるのが脳だけなので日がな一日『
なぜ私がこんな目に』とネガティブな思考が頭を駆け巡ってしまって……。そんな時は『
転んでもタダでは起きるものか!』という思いだけが、すがれるものでした」
――作品を発表して、読者の反応で驚いたことなどはありますか?
ひるなま「意外と多く頂いて驚くのが、『
今日ガンの告知を受けた』『
明日から入院』『
来週手術を受ける』といった、今まさにガンと向き合う瞬間にいる方からの沢山のお声です。執筆時、大腸ガンだけでも、日本で毎年15万人が診断されると知って、その数の膨大さをにわかには信じられなかったのですが……。本当に、毎日毎日こんなにたくさんの人がガンを告げられているの!?と実感させられています」
――医療関係者からの反応はどうでしたか?
ひるなま「予想外だったのは、医師など様々な医療関係の方が、当作の表現や内容に過分な好意的評価を下さったことです。お勤め先の医院などに当書を置いてくださるというお便りも意外なほどいただいてまして、
タイトルに『エロ漫画家』なんて入っていますけど大丈夫!?と、嬉しいけれど妙な心配をしております(笑)」
後編では「初めてストーリー漫画を描いたのは29歳のときだった」という驚きの経歴や、闘病生活は、『「日常をどう保つか」が大切』と語るひるなまさんに、さらに迫ります!
【インタビュー後編】⇒
末期ガンの38歳BL漫画家、退院した日に観劇へ「推しから生命力をもらった」
【マンガ第1話はこちら】⇒
<マンガ>「最近、やたら腹がへる」と思ったら、ステージ4の大腸ガンでした
<取材・文/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。
@mochi_fumi