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Vol.21-2 首を絞められても結婚を決意。人格障害の妻との日々を、夫は涙で語った

妻は父親から暴力を受けていた

 壮絶な日々の中にあっても、結婚式の準備は進められていた。初美さんはここでも小林さんを困らせた。「呼びたい友達なんてひとりもいない。両親も呼びたくない」と強硬に主張するのだ。友達はともかく、新婦の両親がいない結婚式などありえない。よくよく聞いてみると、驚愕の事実が判明する。 「初美は幼少期から、父親にずっと暴力を受けていたそうです。それが男性恐怖症の原因でした。母親も初美を助けてはくれなかった。母親は母親で父親に支配されていて、最寄りの駅より遠くに行ってはいけない、と命令されていたそうです」 写真はイメージです 初美さんの精神疾患の原因が、育った家庭環境にあるのは明らかだった。そこで小林さんは初美さんに、精神科で最新の検査と診断を受けよう、と提案する。  診断結果を見た小林さんは驚いた。初美さんは、いわゆる“ソシオパス”に特徴が合致していたからだ。 「反社会性パーソナリティ障害の一種です。社会の規範や他人の人格を軽視し、不誠実で、欺瞞に満ちた行動をとるような人のことで、しばしば暴力が伴う。生まれつきそういう性質なのが“サイコパス”。幼少期に虐待を受けていたなどの原因で、後天的になってしまうのが“ソシオパス”です」  小林さんの説明によれば、サイコパスの方がより賢く、感情を一切表に出すことなくひょうひょうと人を陥れたりする。ソシオパスのほうが、より感情が表に出やすい。 「初美は、幼少期の父親からの虐待によって男性恐怖症かつソシオパスとなり、そこにストレス過多が重なって双極性障害を発症した、ということです」

「私は人格障害なんだと思う」

 新婦の両親なしでの結婚式はありえないとプランナーに止められた小林さんは、渋る初美さんを説得して、式に初美さんの両親を呼ぶことにした。ただし、バージンロードは父親と歩かず、新郎の小林さんと一緒に入場。「記録を残したくない」という初美さんの希望を汲んで、カメラマンも入れないことにした。当然、新婦両親からの挨拶もなし。  異例の式ではあったが、たいそう盛り上がった。小林さんと初美さんが、招待者のおもてなしに心を砕いたからだ。外部から腕利きのシェフを呼んで料理をふるまい、メッセージカードも1枚1枚手作りした。 写真はイメージです「僕らの隠しプロフィールカードに、初美はこう書いてくれました。“徹くんはとっても繊細で、私がよく泣かしてしまいます”。あとで聞いたら、暴力をふるってしまうことを謝りたくて、と言っていました。本当に……嬉しかったです」  結婚式後、小林さんは初美さんの治療のために一大決心をする。勤めていた出版社を辞めて会社を設立し、そこで自分の仕事をしつつ、初美さんの執筆仕事をマネジメントする窓口とするのだ。初美さんは経理担当の社員とし、調子が悪ければ休んでもいい。コールセンターの仕事は少しずつ減らしていき、規則正しい生活を心がける。  効果はてきめんだった。  3日暴れていたのが、2日になり、それが1日になり、ときには深夜に暴れても朝方には収まるようにすらなった。そして初美さんは自ら病気のことを調べるようになり、ついに、こう口にした。 「私は人格障害で、ソシオパスなんだと思う」
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自力で認める勇気と覚悟
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