抗がん剤を変えようと主治医に提案されるたびに、私は夫に「
本当にそれでいい? 納得してる?」と確認していました。

医師に指示されるままうなずいていたら、もし薬が合わなかったり副作用がひどかったりしたときに、当てどころのない怒りや後悔を感じてしまいそうだったから。
リスクを含めて自分が納得して選んだ治療なら、つらいことも乗り越えようと考えられるのではないか、と思ったのです。
今となっては、夫が選んだ治療法が本当に合っていたのかどうか、正直わかりません。もしかしたら治療しない方が長生きしたかもしれませんし、当たる民間療法があった可能性だってあります。でも夫が納得して選んだ治療だったので、私に後悔はありません。そういう意味では正解だったかなと思っています。
この経験から、がんの治療も人生の選択も、考え方は同じだと思うようになりました。学校を選ぶとき、会社を選ぶとき、恋人を選ぶとき……どれもやってみないと正解はわかりません。選ぶ基準は「正解かどうか」ではなく「自分が納得しているかどうか」しかないのです。