「え?なんで?ってその時思いましたよ。あおり運転の事件のニュースも見ていたので、余計に怖かったです」
ユカリさんが短いため息を吐いた後、いきなり運転席のドアを足で蹴るように開けて外に出ました。
男はその勢いに気圧されたのか一歩後ずさりします。ヨシカズさんは、なんてことするんだ!と内心大慌てでしたが、ユカリさんは胸を張って事も無げに男に近づいていきます。そして、いつもより少し低くドスのきいた声でこう言いました。
妻「テメェ、この辺の者か? ウチの名前、◯◯知ってんのか?」
一瞬輩は目を大きく開け
輩「◯◯? え、もしかしてあの◯◯さんの妹さん?」
先ほどまで威勢が良かった輩が、まるでホテルのベルボーイのようにユカリさんに深々と頭を下げて、大声で「申し訳ございませんでした!」と謝罪の言葉を述べました。さらに旦那であるヨシカズさんにも大きく一礼をして、消え去っていきました。
「もういったい何が起きたのか何が何だか分かりませんでした」