
©M-1グランプリ事務局
――錦鯉の漫才の強みはどこなのでしょうか?
「錦鯉さんは、渡辺さんの安定感も素晴らしいですが、やはり長谷川さんの“おバカさ”が一番の魅力です。
1本目の合コンのネタ『みんなは好きなアルファベットってある? 俺は6!』や、2本目の猿を捕まえるネタの、自分で仕掛けた罠のバナナを自分が忘れてしまって罠にかかってしまうくだりなど。かなりおバカな人でないと成立させられません。
『好きなアルファベットってある? 6!』
…そんなこと、リアルにおバカな人でもなかなか言いません(笑)
よって、若い芸人さんや、計算でボケているように見える芸人さんがアレをやってしまうと、ウソっぽく見えて、お客さんはスッと冷めてしまいます。
しかし、それを成立させられるほど、おバカに見えてしまうところが錦鯉さんの強みです」
――ファーストラウンドでの1つ目のネタ終わりでは、最高点を出したオズワルドがこのまま勝ち抜けるかとも思われましたが、最終決戦で錦鯉が優勝となりました。錦鯉の2本目のネタの強さのポイントは?
「結果論になってしまいますが、今回の勝因は、2本目で長谷川さんが『(逃げている猿が)森の中に逃げ込んだ!』と叫んだあとの渡辺さんの台詞『じゃあいいじゃねえか』で、毛色の違う笑いを盛り込んだところでしょうか。
“いつものおバカだけじゃない!”と、お客さんを油断させませんでした。
2本目は、どの芸人さんも“1本目と同じパターンが吉か、違うパターンが吉か”、悩ましいところです。もちろん、それぞれのキャラクターや現場の空気でどちらが吉になるかはケースバイケースです。
錦鯉さんは“同じパターンか”と思わせておいて、少し違う種類のボケを入れ込めたのが、最後まで走りきれた要因かと思われます」
――錦鯉のネタを当初どのようにご覧になりましたか?
「“どのようにご覧になりましたか”、という意味では、優勝すると思っていませんでした。本当に申し訳ないです(笑)
昨年決勝進出し、みなさんご存知のように知名度は格段にアップ。現在、テレビで大活躍されています。
一方で、忙しいであろうスケジュールのなか、ネタに向き合える時間も少ないと推測されますし、手の内はバレています。錦鯉さんにとって、M-1グランプリのメリットは十分なほどに享受したのではないかと思っていました。
そんななか、今年もチャレンジし、そのうえ決勝進出。尊敬の念もありながら、心のどこかで『ちょっと!若手に枠を空けてあげなさいよ!』という思いもありました。しかし、圧巻の優勝。これは参りました。あらためて、優勝おめでとうございます!」
強豪ライバルを振り切り、見事、王者となった錦鯉、2022年の跳ね方が楽しみですね。
<文/女子SPA!編集部>