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30すぎて発達障害とわかった私が、治療で“ましになった”話/漫画家・カレー沢薫/2021人気記事BEST5

担当は二週間で病院を探してきた

カレー沢薫「なおりはしないが、ましになる 第1集」 だが、仕事を辞めてすぐ検査に行ったわけではない、その間会社を辞めたせいで「集中力のなさ」が余計顕著になってしまい、ダメだこいつ早く何とかしないと、と思っていたのだが、検査する病院すら見つけられないでいた。  これは「どの病院を選ぶか決めきれない」という話ではなく「大人の発達障害を検査してくれる病院」自体をお得意のネット検索で見つけることが出来なかったのだ。  そんな時、別件で漫画の担当と会うことがあり、そのことを話したところ「それは検査した方がいい、ついでに漫画のネタになりそうならしたら良い」と言われた。  編集者というのはコミュ力と行動力の化物である場合が多いので、私が30年以上グダグダしていたのに対し、担当は二週間ぐらいで病院を探してきた。  しかし、その病院が「狂った街凍狂」でお馴染みの「東京」だったことには驚いた、ちなみに私の家からの通院手段は「飛行機」だ。  だが、この時にはもう後には引けなくなっていた、ちなみに「断るの下手かよ」という特性も発達障害にはあるらしい。

発達障害に関しては未だに凄まじい地域格差がある

 だが、これは後に正しいということがわかった。  何故なら、私は近くで病院を見つけられなかったのではなく「存在しなかった」のだ。  後日、地元の家族に発達障害を持つ人と話す機会があったのだが「我が県でも子どもの発達障害を診てくれるところはあるが、大人を診てくるところはほぼ皆無」と教えられた。  このように発達障害に関しては未だに凄まじい地域格差がある。  私はたまたま近くに化物がいたからまだ良かったが、おそらく長年違和感を感じながら「検査」まで至れない人は大勢いるだろうし、私のような地方民なら尚更だと思う。  必ず検査して明らかにしなければいけないというわけではないが、本書では検査や検査してどうなったかなどが書かれているので、何かの参考にしてもらえればと思う。

発達障害だろうが、なかろうが本人が楽になることが重要

 ちなみにタイトルでネタバレしてしまっているが、発達障害は現時点で「治る」ものではない。  これは絶望的な話かもしれないが「治る」と言われたら「何故俺は治せないのだ」と絶望するに決まっている。  どうせ治らないなら、治らないということをポジティブに、悪く言えば開きなおった方が楽な部分もある。  とにかく、発達障害だろうが、なかろうが本人が楽になることが重要ということだけはわかったのだ。 【カレー沢薫さんによる30代からの終活マンガ『ひとりでしにたい』自作解説はこちら】⇒孤独死は、死ぬ予定があるひと全員が関係ある話/カレー沢薫・自作解説 <文/カレー沢薫> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
カレー沢薫
かれーざわ・かおる 1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。主な漫画作品に、『ヤリへん』『やわらかい。課長 起田総司』、コラム集に『負ける技術』『ブスの本懐』『やらない理由』などがある
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