「初対面の彼は、DMの印象どおりの好青年でした。本のデザインの仕事の話を詳しく聞きました。実家は江東区の酒屋であることなどを笑顔で話してくれて好印象。私、もともとインドアで本好きだしお酒も好きなので、彼の話がほんとに楽しくて、恋に落ちちゃったんですよね。
お店を出たあとに彼がギュッと私の手を握ってきて、私……夫への罪悪感もほとんど感じず、そのまま六本木のラブホテルに行きました」

その夜、帰宅は深夜になった。何も知らない夫は、寝室で子供とくっついてスヤスヤ眠っていた。さすがにその姿を見たときには罪悪感を感じたという。
「でも、その時だけです。あとはまったく……」
例の彼と毎晩のようにDM。彼には既婚であることは話しておらず、たった一度しか会っていないのに彼も自分に夢中だと、結婚したいと言い出した。
もう、この彼のためには子供を置いて家を出ようかとすら思うほど好きになっていた。
そんなある日、彼から困った様子のDMが来た。彼の父親が営む酒屋がピンチでどうしてもあと300万円必要だという。来月には300万円が父の手元に入ってくる。でもその前に300万円が必要なのだと、かきあつめるために必死だと……実は自分は不安定な仕事のためあまり貯金をしておらず、消費者金融から借金をするしかないというDMだった。
それを見た彼女は、なんとか彼を助けたいと思った。そして、家計から毎月貯金をしていて、ちょうど300万円位ならすぐに貸せると思った。すぐにこう連絡をした。
“私がそれ、たてかえましょうか?”
でも彼は躊躇したような様子で“それは申し訳ないから……”という返事がきた。しかしケイコさんはいてもたってもいられず“いいから振込先を教えて”と連絡。彼からは折り返し振込先の連絡がきて、ケイコさんはすぐにネットから振り込んだ。