――イタコさんのご両親は、なぜそんなにも頻繁に呼び付けていたのでしょうか?
イタコ:夫婦2人きりだと間が持たないからだと思います。今は両親の仲が悪いわけではないのですが、子どもありきで成り立っていた家庭だったので、2人では会話が続かないのかもしれません。
――実家に行くために手土産を考えなければいけないというエピソードに驚きました。
イタコ:姉が基準になってしまうので、「お姉ちゃんは花やお土産をくれたのにお前はちゃんとしていない」と言われてしまって合わせないといけなくなっていました。
結婚してから実家にどこまで気を使えばいいのか分からなくて「難しいな」と思っていました。結婚前までは一緒に暮らしていて冷蔵庫も一緒だったのに、「手土産を持っていかないといけない」と言われる感覚に慣れませんでした。
――お姉さんと比べられてしまうのですね。
イタコ:姉は実家に行くのが苦にならないタイプで毎日のように会いに行っていました。それと比べて「お姉ちゃんは私達をこんなに必要としてくれているのになぜお前は拒否するんだ」と言われました。
――イタコさんのご主人はご実家との関係をどう思っていたのでしょうか?
イタコ:夫は「干渉が激しいよね」と言っていました。でも私自身は、最初の頃「息子と娘では感覚が違うのだろう」「娘にはしょっちゅう会いたいものなのでは?」と捉えていました。でも、私も夫と話すことで「私が会いたくないと思っているときに会いにいかなければならない状況がおかしいんだ」と気が付くようになりました。
――ご主人から言われて気が付くことは他にもありましたか?
イタコ:いろいろとありました。例えば、子育ての初期に私が冗談で娘に夫のグチを言ったことがあったんです。「パパって本当にダメだよね〜」「パパって最悪〜(笑)」みたいなことを、夫がいないところでふざけて言っていたら、娘から伝わってかなり怒られました。
夫は滅多に怒らない人なんですけど「家族間の悪口をその人がいないところで言うのは絶対に良くない」と真剣に叱られました。「冗談でもそういうことを言うと子どもが親に不信感を持つし、両親の仲が良くないのかなと不安にさせる。不満があるなら皆がいるところで話し合おう」と言ってくれました。そう言われて「実家でやっていたことと同じことをしてしまっていた、マズかったな」と気づかされて、すごく反省しました。
――ご実家では家族同士の陰口が多かったのでしょうか?
イタコ:お母さんがお父さんのいないところで悪口を言っていたし、その逆もありました。陰口で絆を深める傾向があって、そういう話題が多かったと思います。だから親に対して「この2人はこんなにいがみ合っているのにどうして一緒にいるんだろう」とずっと不思議に思っていました。それで家族仲が悪くてドライな関係なら理解できるのですが、やたらと「家族の絆が大事」みたいなことを言って家族に執着するのが腑に落ちなかったです。
<取材・文/都田ミツコ>
都田ミツコ
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。