妻への不倫疑惑「本当に自分の子なのだろうか」DNA検査結果を見せると妻は…
運命として僕らは受け入れるしかない
「妻から『気持ちに余裕がもてなくてごめんね。息子のことを話さないと』と言ってくれたんです。その間、兄を亡くした妻の悲しみや苦悩を見てきて、僕の中でも少し変化が起こっていました。妻と義兄は仲がよかったんですよ。義姉は妻が自分の友だちを兄に紹介して結婚した。だから兄ともう会えない妻の気持ちは、僕にもよくわかりました。
『人はいつかいなくなる。僕にとって縁のない子でも、きみの子であることには変わりない。今はそんな気がする』と僕は言いました。妻は『そうね、やっぱり離婚するしかないのかもしれないね』と。いや、そういう意味じゃないんだと僕はあわてました」
彼が言いたかったのは、これもまた縁なのかもしれないということだった。妻が浮気したのは事実だが、彼女は彼女の中に昔から巣くっている彼への思いを解放したかったのだろう。結果として子どもが産まれた。避妊はしていたし、妊娠する可能性の低い時期だったと彼女は言った。それなのに妊娠したのだ。産まれてくる運命だったのだろうと彼は考えた。
「義兄さんが亡くなって僕自身もショックだった。いい人でしたから。でもそれもまた運命として僕らは受け入れるしかないわけです。
理不尽ですよ、元気だったのだから。だけど受け入れるしかない。だったら妻が産んだ息子を受け入れてもいいんじゃないか。なんだかそんなふうに思ったんですよね」
「人として試されている」とすべてを受け入れた夫
もともと仲のよかった夫婦に亀裂は入っていないのだろうか。
「妻のほうは僕にちょっと遠慮しているところがあるかもしれませんが、もうそういうのはやめようと言いました。些細(ささい)な気持ちの変化も伝え合おうと。
過去を振り返っても何も生まれませんから。なんだかねえ……生きていくということは、自分や大切な人たちに起こったことをどううまく受け止めていくかにかかっているんじゃないかと最近、しみじみ思うんです。常に人として試されているような気がしますね」
彼はすべてを受けとめ、受け入れた。この先、夫婦関係や親子関係がどうなるかはわからない。だがそのつど、起こったことを受け止めて受け入れていくしかないのかもしれないと彼は穏やかな笑みを浮かべた。
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<文/亀山早苗>
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フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio


