「わーーっ!」
観察に熱中している息子の悲鳴が聞こえたのでした。和佳奈さんは、大急ぎで息子のそばに駆け寄ると、そこにはなんとフタの開いた虫かごと、その周りをブンブン飛び回るカブトムシの姿が。
どうやら息子がスマホで撮影中に、虫カゴのヒモを手にひっかけてしまい、床に虫カゴを落としてしまい、その衝撃でフタが開いてカブトムシが脱走してしまったのです。
あろうことか、彼らは、さっきまで食後のスイカを切っていた、和佳奈さんの甘い汁がついた手をめがけて一番大きなオスが「ブーン」と飛んできたそうです。

「今度は私が向かいの森に響き渡るくらい『ギャァァァ!!』と大きな悲鳴をあげてしまったんです。その時は全力でカブトムシを振り払ったつもりだったんですが、恐怖の羽音が収まったと思った矢先、今度は目の前の息子が私を指差して『ママー! そこ!!』と叫んだんです」
恐る恐る顔を下げた和佳奈さんの視線の先には、服にひっかかった大きなカブトムシが、ちょうど胸の谷間のところに。
悲鳴を通り越して、なかばうめき声のような、家族の誰もが聞いたこともない奇声を発した和佳奈さん。
もはや何の声かわからない大声は、周囲の建物にも響き渡り、しばらくして施設の警備スタッフが慌てて部屋に飛んでくる始末に。