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医療費が高くついたのに戻ってこない!高額療養費制度の落とし穴ルールとは

通院、入院、歯科はそれぞれ別カウント

 さて、もうひとつの例です。  本人が10万円の窓口負担をしたのに、対象にならなかったというケース。これは、「2万1000円ルール」に加えての、もう一つの条件がネックでした。なんと、通院、入院、歯科はそれぞれ別カウントだったのです。  つまり、こういうことです。本人は2万円の通院の窓口負担、2万円の歯科医療の窓口負担、そして、6万円の入院での窓口負担を支払いました。しかし、通院、入院、歯科はそれぞれ別々にカウントされるので、この場合、高額療養費の対象になりそうなのは、入院の6万円部分のみ。  しかしそれでは、「8万100円と少し」未満の負担でしかない。ということで、全部で10万円かかっても、高額療養費制度による軽減の対象にならなかったのです。 62日間の入院で、治療費は1億2,000万円 もしも、通院で3万円、歯科で2万円、入院で7万円の窓口負担だった場合は、通院と入院が「2万1000円以上」ですから、入院と通院の合計10万円が高額療養費制度の対象となり、2万円近くが戻ってくることになります。  でも、歯科の分は2万1000円未満なので対象外。実際にかかった医療費負担は全部で12万円なのに、10万円分しかカウントされないのです。  高額療養費制度での1か月の窓口負担の上限額は、シンプルに「8万100円と少し」ではなかったのです。

実際には厳しいハードルが。改めてもらいたい

 高額療養費制度は多くの世帯にとって大切なセーフティガードです。  この制度があるから、民間の医療保険に大して入らなくても大丈夫と思っている人も多いはずです。  しかし、実際の運用では非常に厳しいハードルがありました。この運用ルールについては、多くの人が知らないでしょうし、これは制度の趣旨からいっても欠陥と言わざるを得ません。  世帯ごとに、毎月支払った金額をシンプルに積算して、高額療養費制度の対象となるかどうか判断するように改めてもらいたいと思うのです。 【他の記事を読む】⇒シリーズ「女性が一生、お金に困らないためのレッスン」の一覧はこちらへどうぞ <文/佐藤治彦>
佐藤治彦
経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『年収300万~700万円 普通の人がケチらず貯まるお金の話』、『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』、『しあわせとお金の距離について』『急に仕事を失っても、1年間は困らない貯蓄術』など多数 twitter:@SatoHaruhiko
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