「足の痛みに耐えながらどうにか新宿まで戻ってきて、小田急線に乗り換える前にベンチに座ってうなだれていたら、通りすがりの男性に『大丈夫ですか?』と声をかけられたんですよ」
美紀さんは、今度はスッと「慣れないパンプスで、ちょっと足が痛いだけなので大丈夫です」と答えました。
「知らない人にはなぜか正直に言えたんですよ。そしたら『良かったらこれ使ってください』と紙袋からド派手なサンダルを出して私に差し出してきたんですよね」

それはあのディスカウントショップ、ドン・キホーテのキャラクターのペンギンの顔があしらわれたサンダルでした。
「私が不思議そうな顔でそのサンダルを凝視(ぎょうし)していると、その男性が『実は、先日酔っ払ってドンキに行った時にいつの間にか買っていたみたいで翌朝ビックリして。仕方がないから、キャラもの好きの妹にあげようと思って持っていったら、さっき“こんなのいらない”って突き返されたんですよ』とトホホ顔で話してくれて」
「なので、ちょっと恥ずかしいかもしれませんが、とりあえず家までこれで帰ったら痛くはないと思うので、どうぞ。その後は捨てちゃって全然構わないので」と笑顔で立ち去ろうとする男性を、美紀さんは思わず引き留めたそう。
「いくら酔っていたからといって、こんなサンダルを買うって? と面白過ぎたので、つい『このお礼がしたいのですが…』と言ったら『お礼なんていいですよ! あ、じゃあ僕、インスタに手料理の写真いっぱい載せているので良かったら“いいね!”してください、とアカウントを教えてくれたんですよ」

それ以来、Kさん(32歳・会社員)とはインスタにお互いが写真をアップすると、いいね!をするようになり、次第にDMで個人的な話をする仲に。そして最初のデートでお付き合いをすることになりました。
「私がスピード離婚した話ももちろんしました。そしたら『僕らはゆっくりお互いのことを知ってからにしようね』と言ってくれて、これって軽めのプロポーズ? とちょっと浮き足立ってしまいました。でもアセっちゃダメですよね(笑)」
美紀さんは、2人の出会いのきっかけになったドンキのペンギンのキャラが大好きになったそう。出会いって意外な瞬間にやってくるものですよね。「なんかタレ目なところとか、ちょっとKさんに似ている気がして(笑)今でもあのサンダルはベランダで使っていますよ」と幸せそうに話す美紀さんでした。
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<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
@skippop