「上司の誘いを断るのか」無理やり車に乗せられたA子さん
直属の上司が動かない以上は中西さんも次の手を打てず、A子さんには「無理だと思ったらすぐに言ってください」と何度も伝えていたそうです。
それからしばらくして、あるお昼休みのこと。
その日は朝から暗い顔をしていたというA子さんは、部署のみんなでお弁当を食べているとき、ぽつりとこんな言葉を漏らしました。
「
昨日、帰ろうとしたら○○課長が駐車場で待っていて、食事に連れていかれました。
用事があるのでと帰ろうとしたら『上司の誘いを断るのか』ってきつい声で言われて、怖くなって仕方なくクルマに乗りました……」

A子さんの告白に、その場は一気にざわめきます。
「え、ありえないんだけど」
「最低」
「あの人、既婚者だよね? なに考えてるの?」
と口々に話すみんなのなかで、中西さんは「もう限界だ」と思ったそうです。
いくら誘っても首を縦に振らないA子さんに業を煮やした課長が待ち伏せをしたのは明らかで、「
こんなことが続けば食事では済まなくなる」と、中西さんは社長への告発を思いつきます。
A子さんに「うちの上司じゃ埒(らち)が明かないから、社長に直談判します。あなたも派遣会社の上司に相談してください」と告げ、その日の夕方、社長に面会をお願いしました。

「
俺が動いたことは○○課長にもうちの上司にもばれるだろうし、そのことで不利益なことがあるかも、とは思いました。
それでも、起こったことを抱えきれずにみんながいる場でつらさを吐き出したA子さんを見ていたら、動くしかないと。
こんなこと、あったらいけないんです」
そのときのことを思い出して強い口調でそう話す中西さんは、課長や上司への怒りを覚えたまま、これまでのことを全部社長に伝えたそうです。