ちなみにテーマは「年代別に見る高校中退者の考察」という内容。つまり、彼女にとって和美さんは格好の取材対象だったわけです。
「具体的なエピソードだったり、私が当時どう思っていたかなんて突っ込んだ話はしたことがなかったし、できれば触れたい内容ではありませんでした。けど、真剣な表情でお願いされ、ましてや大学のレポートに必要と言われたら母親として断れないじゃないですか。だから、本当はシブシブでしたけど、娘には笑顔で快諾したように見せました(笑)」
押し入れの奥に封印していた中学の卒業アルバムやそのころの写真を引っぱり出し、不良の道に進んだ経緯や当時の心境、両親や教師、周りの大人たちをどう見ていたのかなどを1つ1つ丁寧に語ったとか。娘さんからの質問にもすべて答え、気がつくと2時間近くしゃべり続けていたそうです。
「このときは娘も茶々を入れたりせず、ちゃんと話を聞いてくれました。ウチは亡くなった父が良くも悪くも自分の考えを子供に押し付けてくる人で、グレ始めたのはそんな父への反発からでした。私が結婚するころにすっかり丸くなり、孫を溺愛する好々爺と化していましたが、娘は『ちょっとお母さんの気持ちわかるかも。親がそんなんだったら私も荒れてたと思うから』って。そんな風に理解を示してくれるとは思わなかったため、そこは嬉しかったですね」

ただし、その日の夜、仕事を終えて帰宅した父親と長女に向かって、「お母さん、中学生のときに隣町の学校の女子生徒と鼻血出しながら殴り合いのケンカしたんだって! 超ヤバいよね」と聞いたばかりのエピソードをさっそく暴露。しかも、先程の態度とはまったく違い、ハイテンションで語っていたといいます。
「あの子、意外と聞き上手なんだなと内心褒めていたのに私がバカでした……。さすがに腹が立ったので娘のこみかみを拳(こぶし)でグリグリしてお仕置きしておきました。『きゃー、おかーさん、ごめんなさい! 許して~』って悲鳴を上げてましたけどね(笑)」
娘さんは最後の最後で元ヤンだった母親の地雷を踏んでしまったようです。
―シリーズ「ヤンキー・ギャル・コギャル」―
【他のエピソードを読む】⇒
「実録!私の人生、泣き笑い」の一覧へ
【あなたの体験談を募集しています!】⇒
心がほっこりした「ちょっといい話」、ありえない!「びっくりした話」「ムカついた話」、人生最悪の恋愛を募集中!(採用時に謝礼あり)ご応募はここをクリック
<文/トシタカマサ イラスト/やましたともこ>
トシタカマサ
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。