オダギリジョーさんの役柄で記憶に新しいのは、昨秋から今年の春にかけて放映されたNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』です。祖父・母・娘と三世代の女性を描いたこちらの作品で、二部ヒロインの相手役であり三部ヒロインの父親・大月錠一郎という重要な役柄を演じました。

『連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」オリジナル・サウンドトラック 劇伴コレクション Vol.2』(SMJ)
この作品での彼は
ヒロインから心の中で「宇宙人」と呼ばれていたほど当初は得体のしれない人物でした。通常、朝ドラヒロインの相手役と言えば、爽やかで誠実なのがセオリー。登場時点の雰囲気でだいたい相手役の目星がつくものですが、オダギリさんが演じる錠一郎はその真逆でどこかつかみどころのない人物。だからこそ、恋の行方が成就に至るまで予想できず、私たちをドキドキハラハラさせてくれました。
一方、父親となった三部では、常識的に受け入れられ難い
「働かない父親」でありながらも、悲壮感や嫌味なく、スッと話になじむ独特の存在感を醸し出し、見事にハマっていたのです。
どんな役でも納得させる、オダギリジョーの得体の知れなさ
昨年放映されたドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)で演じた役も、数学好きな元ヤングケアラーで、主人公・とわ子と距離を縮めながらも、ビジネスでは彼女に対し非情な決断をする……という、驚くほど多くの面を持ったキャラクターでした。
しかし、それでも不自然でなかったのは、オダギリさんの得体の知れない存在感があったからこそ。「彼ならあり得る」と十分な説明なくともどこか納得してしまえるのです。