恋人の素養にまでとやかく言うのは恋愛ハラスメント。ましてや殴るだなんて言語道断です。「でも…」と葵さんは振り返ります。

「
最初に会った時や、ふだん怒らずに話をしている時の彼は“おちゃらけて楽しい”人でした。私の話を親身に聞いてくれる一面もありました。そのふだんの様子とキレて喚く姿を見て、本当の彼の姿は前者で、後者は仕事が上手くいっていないことへの鬱屈によって出てしまう姿なのではないかと思ったのです。嫌な言い方をすると、可哀想な人を観察するような気持ちで見ていました」
男性は欠点ばかりで良い点がひとつも見当たらないし、葵さんはなぜこんな男性と付き合っていたのでしょうか。
「彼こそがトラブルの元なのに、散々“なぜトラブルの元を作るんだ”と私が悪いような言われ方をされ続け、原因は私にあるのではないかと思っていました。別れた今でも“あの時こうすればよかったのか?”と、未練がましく思うほどです。なによりも可哀想な人だと彼を見る一方で、
彼のような複雑で扱いにくい人間を理解したいと思ったし、世知辛い世の中をなんとか歩めないかと思ってしまった。もはや愚かしい執着でした」