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『エルピス』長澤まさみと眞栄田郷敦には“モデル”がいた。佐野Pに聞く傑作の舞台裏

 実在する複数の事件から着想を得た社会派エンターテインメント作品で長澤まさみさん主演の『エルピス-希望、あるいは災い-』(月曜夜10時、カンテレ制作・フジテレビ系)が、いよいよ佳境、ある種の“絶望”を迎えています。 【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます
エルピス1

(C)カンテレ

忖度ナシのドラマに、絶賛の声が

 同作は、『カルテット』(TBS系/2017年)、『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ制作・フジテレビ系/2021年)などの佐野亜裕美プロデューサー(以下、P)と、NHK連続テレビ小説『カーネーション』(2011年度下半期)などの脚本家・渡辺あやさんが6年がかりで作り上げてきました。  佐野PがTBSにいた2016年に「ラブコメ」からスタートした企画ですが、その後大きく変わってボツになり、佐野PのTBS退社→カンテレ(関西テレビ放送)入社によって実現したのです。その異例の経緯もさることながら、忖度ナシのヒリヒリする内容には、快哉を叫ぶ視聴者が続出。  そこで、残り2話の放送(12/19、12/26)を控え、制作統括の佐野亜裕美さん(40)にインタビューを行いました。
佐野亜裕美さん

佐野亜裕美さん

ほめられても「ひとつの指摘でクヨクヨする」

――SNSなどで大変な話題になっていますが、佐野さんは反響をどのようにご覧になっていますか。 佐野亜裕美(以下 佐野):私は日々反省がちな人間なので、反響に喜ぶ瞬間は性格上なくて、ほめてもらうと「なんかすみません」みたいな気持ちになってしまうんですね。 例えば、村井役の岡部たかしさんや、刑事・平川役の安井順平さんが記事になったり、スタッフや役者さんがみんなにほめられるのは嬉しいんです。でもドラマ全体で言うと、自分のプロデュースワークの拙(つたな)さのほうが気になってしまって。 ――ご自身が考えるプロデュースワークの拙さというと? 佐野:例えば、「このシーンは別の芝居も試しておいたほうが良かったんじゃないか」とか、「もっとできたことがあったんじゃないか」とか……それを試したからといって良くなったかはわからない、答えのないことをグルグル考えてしまうんです。 そういう個人的な引っかかりの部分を、誰かに指摘されたりすると、「ですよね!」とか思ってしまって。仮に99の賛辞があったとしても、1の指摘をクヨクヨ気にしてしまう性格なんです。そういうところを直していかなきゃと、いつも(渡辺)あやさんから怒られるんですけど。 <物語の軸となるのは、犯人の死刑が確定した連続殺人事件。それを追いかけるのが、スキャンダルで看板ニュース番組を降板した女子アナ・浅川恵那(長澤)と、バラエティ番組の新人ディレクター・岸本拓朗(眞栄田郷敦)のバディ(=相棒)だ。 拓朗は、ヘアメイクの大山さくら(三浦透子)にある弱みを握られたことから、連続殺人事件の冤罪疑惑を追うことになり、かつて冤罪事件を取材していた浅川を頼る。 序盤では、成り行きで巻き込まれた頼りないボンボン・拓朗を置き去りにし、恵那が「正しさ」に向かって一人突っ走ってしまう。しかし拓朗は、かつていじめに遭っていた親友を見殺しにした罪悪感を背負っており、同じあやまちを繰り返したくないという思いを強め、事件の真相解明にのめり込んでいく。>
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佐野Pを2で割ったら、拓郎と恵那になった
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