――強さと繊細さのある恵那に対して、最初は拓朗の空気を読まない振る舞いが印象的でした。それは後に事件解決への大きなエネルギーとなっていきますが、こうしたキャラクターは佐野さんのご経験から生まれたものですか。

恵那(長澤まさみ)と拓郎(眞栄田郷敦)(C)カンテレ
佐野:キャラクターやストーリーを作る前にもちろんいろいろ打ち合わせはしますが、私が大きく担当したのは事件のプロットの部分で、それ以外には例えば女性アナウンサーは普段どんな生活をしているのかとか、具体的なキャラクター作りのためのリサーチやネタ提供をする程度なんですよ。
登場人物の性格について、私から「こうしてほしい」などと言ったことは何もなくて。そもそも台本打ち合わせの8割くらいは私のグチとか友人の話なんです。例えば「こんな上司がいて、こんなことを言われた」なんて話を、あやさんが住む島根に1ヶ月に1回くらい行って聞いてもらったり。それらがキャラクター作りの素地になっていったらしいです。
――佐野さんがモデルとなっている部分がやはりあるんですね。
佐野:そうかもしれないですね。先日、あるトークイベントであやさんとお話をしたとき、私の人格を2つに割って拓朗と恵那になったという話が出ました。ときには朝9時から打ち合わせを始めて気がついたら日が暮れていたこともあるんですが、ずっと2人で喋っている中で、たぶんあやさんなりに私を通して見るテレビ業界やテレビ局で働く人を想像して作ったんだろうと思います。
恵那と拓朗のバディにしても、ドラマを作るセオリーでは、バディものって普通は凸凹コンビにするじゃないですか。もちろん拓朗と恵那にもそういう部分はあるんですが、例えば2人ともメンタルに不調が来ると、モノが食べられなくなる。同じダメージの出方をするんですね。普通のドラマだったら、おそらくダメージの表出の仕方を、一方は頭痛にするとか、変えると思うんですが、そこは考えていなくて。
私のナイーブな部分と、あまり空気を読まずに「なんでそれ、やっちゃいけないんですか!?」みたいに平気で言っちゃうような部分が2人のキャラクターのベースになっているというのはあると思います。だから、どっちも自分のようだと思うこともあるし、「私だったらそんなこと言わない」と思うこともあるし。あとは、友人の話や同期の話がモザイク状になって組み込まれている気がします。