「大人たちは寝ずに警察の現場検証に付き合いました。広い家ですし、20名くらいが泊まってましたから、何がなくなったのかをリストアップしていくのもひと苦労で……」

一番祖母がショックを受けていたのは、祖母の母親の形見である立派な着物がなくなっていたこと。一方の祖父は『
命が無事なら大丈夫』と、堂々としていたそう。
「神社に行くときに全員財布を持っていたので大きな被害はありませんでした。あと祖父は大切なものを金庫に入れるくせがあり、金銭的な被害も少なく……。泥棒もがっかりしたんじゃないですかね。富豪の家に侵入したのに、主な収穫は子どもへのお年玉くらいですから。みんなだんだんと『家はでかいけどなんにもないからなぁ』なんて冗談を言えるようになっていました」
そんな時、祥子さんの夫が突然叫びます。

「朝5時を過ぎた頃でしょうか。夫がキッチンで叫んでたんです。どうしたのかと思って行くと、大みそかにみんなでついた餅が全部なくなっていたというのです。
夫はみんなでついたお餅を食べるのを相当楽しみにしていたそうで……なくなったことにショックを受けなんと号泣! もうそれでみんな大爆笑。夫はわんわん泣いてるし、つられて母も泣き出すし……。20人前以上の餅を担いで必死に逃げていく泥棒の姿を想像したら滑稽で仕方ありませんでした」
警察も思わず笑っていたようで、泥棒が入っていたのにも関わらず現場には和やかなムードが漂います。次の日、近所の空き地に大量の餅が捨てられていたと警察から連絡が入りました。