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ピンク映画300本超を撮った女性監督が貫くエロスの信念「自分の欲望も快感も自分で決める」

「人間はみんな、ふつふつした火山のように肉体の核に“欲情する気持ち”を抱えていると思うんです。エロスは年齢には関係ない。枯れないものだし重要なもの。だからこそ、自分の性の楽しさを人に明け渡してはならないんですよ。この男に嫌われたくないからといって、感じてもいないのに気持ちのいいふりをしてはいけないの。つまらないセックスをするくらいならオナニーしろと私は言いたい(笑)。そうやって自分の快感を自分で知れば、男の言いなりにはならないはずだからね」

誰にも縛られない心と性

「受け身であることをやめること。自分の体も快楽も自分のもの。男はペニスの喜びを知っているけど、女がそれに付き従う必要はない。女は女で、自らの性の喜びを自分で見つければいいんですよ。ペニス盲信はダメなの。お互いに自分の快感を知った上で互いを慈しみあうのがベストじゃないですか」 結婚していても、夫以外にセックスしてはいけないというのはおかしいだろうと彼女は言う。婚姻は暗黙のうちに配偶者以外と恋愛やセックスをしてはいけないことになっているが、それは人間の心と体に反するというのだ。確かに「結婚」があるから「不倫」が生じる。人の心は法律では縛れない。 パートナーがいても、性的に満足していない女性も多い。 「女性の性は、射精すれば終わりという男性の性よりずっと複雑なんですよ。挿入なんかいらないという女性もいれば、まれに前戯なんかいらないという女性もいる。ひとりひとり違うの。だから挿入すればすぐ気持ちよくなるという描かれ方をしている映画やAVを観て、そのまま受け取ってはいけない。自分がどうか。女性にはまずそれを考えてほしい」 浜野佐知インタビュー202301-2b以前、街を歩いていたら後ろの若いカップルが何を食べようかと話していることがあったと彼女は語る。女性が甘えた声で「何でもいい。○○くんが食べたいものでいい」と言った。その瞬間、浜野さんは振り返って「自分が食いたいものを食え」と言ってしまったそうだ。

人の欲望に従う癖をつけないように

「ああいうのを聞いているとイライラしちゃうのよ(笑)。自分の食べたいものくらい自分で決めろ、と。たかが一食のことではないんですよ。結局、そうやって人の欲望に従う癖がついていく」 自分のことは自分で決める。そうすればまっすぐに歩くことができる。 簡単なようで、なかなかできないことでもある。そこには自分と、あるいは見えない世間との闘いがあるからだ。だが、忖度したら人生が歪む。自分で自分が許せなくなる。 浜野さんは「許せないだけじゃなくて、自分を呪いたくなるからね。映画作りにおいても、それだけはしたくなかった」と振り返った。
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インティマシー・コーディネーターの存在に思うこと
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