女性用風俗は、客である女性に男性を派遣するサービス。マッサージをしたり性的サービスもするが、もちろん本番はない。
「事務所にはセラピストと呼ばれる男の子が何人か待機していることもあります。マッサージ研修もあるので、男の子たちが集まる日もある。今は研修は模型を使ったり、研修モデルさんを用意したりしているのですが、当時はまだ会社としても駆け出しで、女性スタッフが研修で女性客役をやっていました。びっくりしたけどもうまな板の上の鯉みたいな気分にもなりました。仕事のマニュアルはないんです(笑)」

彼女たちはそのときどきで、ひたすら臨機応変に対応していく。
「基本はお客さんから電話を受けてセラピストを派遣するのが仕事ですが、それ以上にいろいろなことが仕事になってしまう。たとえば男の子たちの身だしなみを整えること。『靴下に毛玉がついてる』と注意したり、『もうちょっと眉をちゃんと描いたほうがいいよ』と描いてあげたり。爪には清潔感が出るから、きちんと切って整えなさいとアドバイスすることもあります。
何年かこの仕事をしていて思うのは、裏方は男の子たちのトレーナーでもあるな、と(笑)。男の子たちの態度ひとつでお客様が不快な思いをされることもある。
だから言わなきゃいけないことははっきり言うし、なめられたらいけないんですよ」
吉岡さんは、最後の言葉を真顔で言った。
セラピストと呼ばれる彼らは、さまざまな事情で女風にやってくる。副業として稼ぎに来る人もいるし、学生が学費のために働きに来ることもある。
いずれにしても、女性が好きであることが重要だが出入りも激しい。家族にバレてやめていく人もいるし、大学を卒業して就職したからと報告してくれる人もいる。風俗店ひとつの中に、さまざまな人生があり、ドラマがある。

「セラピストだから女性の扱いがうまいとは限らないですよね。
そこにいるだけでは成長しない。やはり自分のテクニックを磨くとか、女性の気持ちをすくい取るような会話ができるようになるとか、目的をもって努力する人がお客さんに愛されるようになっていくんです」
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