子どもの心の専門機関は小児科と児童精神科の二つが主流
自分の子どもに違和感を抱き、医療機関に受診させようと思ったとき。数ある医療機関の中で、どこに受診すればよいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。
「子どもの心に関する専門外来を受けさせようとする場合、まず、大きく分けると小児科と児童精神科の二つが考えられます」と語るのは、精神科医の宮口幸治先生です。
「小児科の場合は、小児科医が発達外来という枠で主に心身面も含めたアプローチが行われることが多いです。一方、児童精神科の場合は、思春期や成人という将来を見据えた上で、精神医学面からアプローチが行われます」
初めて診察を受けるならば、診察のしやすさからいうと小児科のほうが敷居は低いと思われます。
「ただ、子どもが思春期に向かうにつれて、小児科では継続しての対応が困難な場合もあります。そのため、最初から児童精神科を選ぶ保護者も少なくありません」
児童精神科の診察の流れを知ろう!「人生山あり谷ありマップ」で子どものストレスを察する
では、児童精神科を受診する際は、具体的にどのような診察の流れになるのでしょうか?
「医療機関によってまちまちですが、まずは、保護者から成育歴の聞き取りや本人の心理検査などを経て本人の診察などが行われます。
本人の成育歴を聞く場合は、最近の様子だけではなく、その子が生まれたときの様子から丁寧に聞き取っていきます。母子手帳を持ってきてもらうこともあります。
心理検査は、その子どもがどんな状態に置かれているかを客観的に知る重要なツールの一つです。なお、受診の際は、全国に約720名(令和4年12月時点)いるとされる子どもの心についての専門医である『子どものこころ専門医』がいる医療機関を選ばれるとよいかもしれません」

宮口幸治『普通にできない子を医療で助ける マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち5』
本人の診察の中で、精神科医や学校などの教育者が子どもの状況を察するために宮口先生が推奨する「人生山あり谷ありマップ」をご紹介しましょう。
これは、縦軸に「よかったことや悪かったこと」を、横軸に「時間の流れ」を記載して、日常の中で子どもにどんなうれしいことや落ち込むようなことが起こったのかを、グラフとして記載する取り組みです。
「子どもに『どんなことがストレスか?』と聞いても、なかなか言葉では説明できないもの。けれども、このマップを通じて、子どもが普段どんなことにストレスを感じているのかを察することができます。
マップを見ると、意外と大人が思っているのとは異なることがストレスになっていたり、大人が辛いだろうと思っていることが本人にはそうでもなかった……という発見につながることもあります」
なお、この「人生山あり谷ありマップ」は医療機関や教育現場のみならず、親が子どもに対して行うことも可能です。子どもがどのような点で悩みを抱えているのかが見えてくるはずです。
【宮口幸治】
立命館大学教授、一社)日本COG-TR学会代表理事。京都大学工学部を卒業後、建設コンサルタント会社に勤務。その後、神戸大学医学部を卒業し、児童精神科医として精神科病院や医療少年院、女子少年院などに勤務。医学博士、臨床心理士。2016年より現職。『
普通にできない子を医療で助ける マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち5』など著書多数
<文/女子SPA!編集部>
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