「身のまわりのものを自分の応援団と解釈するの」。これも新しい発見だと思いませんか。とりわけ紙と鉛筆は、田村さんにとって「アート健康法」のグッズで「チーム応援団」。メモをとると気持ちも落ち着いてくるそうです。

(撮影:後藤朋子/写真提供:興陽館)
何でも正直に書きまくるのは、田村さんでなくとも効果的な健康法ではないでしょうか。スマートフォンやパソコンではなく、自分の筆跡で自分の本音を知るきっかけになるのです。ポジティブなことではなく、ネガティブなことを書いてもいいのです。感情を書き出して、メモ用紙をまるめて捨ててしまう、これだけでスッキリしそうです。
「健康法はほとんど暗示」。なるほど、これはなんとなくわかりますよね。流行りの健康法がすべての人に効果があるとはかぎりません。だから「みんな自分で勝手に決めればいい」。田村さんが素敵なのは、何事においても自分軸がブレていないから。食事や健康法も、「わたしにとっては」でオールオッケー。それが潔くてかっこよくて、周囲まで明るくしてしまうのです。
「
誰もが、おばあさんになるのは初めてなんですよ」。この一言にハッとしました。年をとるのがこわい、年をとってからのひとり暮らしはさみしい……こんな風にささやかれますが、これらはすべて周囲の印象や想像に過ぎません。自分の思いではないのです。

「年をとることを怖がらないほうがいい」と田村さん。なぜならそれは「当たり前のことだから」。そう、誰にでも平等におとずれましし、むしろ「
初体験の新しいワールド」だと田村さんは言うのです。視力が弱くなったら、新しいメガネを試せるチャンス、耳が弱くなったら、聞きたくないことは聞かなくていいって解釈してみたり。その人のアンテナで、いくらでもプラスに変換できるのです。避けられない出来事からは、逃げるのは無理。だったらとことん楽しむのが勝ち。
「幸せ100個リスト」を田村さんは作成しています。「コーヒーの香りを嗅ぐ」「鉛筆を削る」「工事現場を観察する」……。日々いくらでも増えますし、お金もかかりません。
ひとりの暮らしは毎日自由。ひとりをエンジョイさせるのは、その人の心向きにかかっているのです。田村セツコさん、85歳。好奇心のおもむくままの暮らしは、幸せの宝庫です。
<文/森美樹>
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『
主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『
母親病』(新潮社)、『
神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。
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