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女優・前田敦子の「異常な存在感」…AKB時代、MVで見せた“無言の演技”もスゴかった

黒沢清作品の驚異的な化学反応

 こうした前田敦子の横顔の魅力は、今に始まったことではない。そもそも同作の監督である黒沢清作品に前田が初主演したときから、まさにイケメンだと直感していた。 「AKB48」卒業(2012年)後の主演作品として、巨匠・黒沢清監督との組み合わせは意外だったが、『Seventh Code』(2014年)では、驚異的な化学反応を生じさせた。  最初、鈴木亮平演じる得体のしれない男を追ってロシアまできたか弱い女性かと思いきや、どっこい、実はその正体は、すご腕の殺し屋という。映画のクライマックスで、突如身を翻して、切れ味鋭いアクションで男を仕留める。殺し屋に様変わりする瞬間の静かなる横顔が素晴らしかった。とにかくあっけにとられる大転換は、前田にしか演じられないと心底驚いたものだ。

日常を日常ならざるものに変質させるエスパー

 巨匠監督に才能を見出された前田は、その後も黒沢作品に出演を続けるが、他に類を見ない強烈な奇妙さ漂う黒沢監督の作品で、あれだけの存在感を発揮できること自体、すでに才能である。 『育休刑事』でも、その才能が見事に発揮されている。愛息を抱きかかえた春風が涼子と待ち合わせる場面は、いたって日常の風景だが、この姉役を前田が演じると一筋縄ではいかなくなる。 「もっと身近に特殊な習性を持った人がいる」と春風が説明する涼子は、嗅覚が鋭い。春風の朝ごはんを産地まで細かく当ててしまう姉を「そこまでいくと能力者だから」だとまで言う。日常を日常ならざるものに変質させる才能。なるほど、前田敦子は、まさにエスパーを持った俳優なのだ。
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天下のイケメン俳優
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