「それから深く静かに関係が続いていきました。彼は病気の母親を妻が看病してくれている手前、自分から離婚は言い出せないと。自分がずるいのはわかっていると言っていたけど、ずるくてもいい、私はあなたと離れたくないだけと言いました。とにかく好きだった。一緒にいたいと思った。それだけなんです」 　だが、相手の妻にとっては「それだけ」ではすまなかった。関係が2年ほど続いて、どこかに気の緩みがあったのか、妻にミスズさんの存在が露見した。妻は会社にやってきてミスズさんを呼び出し、「あなたの上司に今すぐ言ってやりたい」と吠えた。 「すごい迫力でした。怖かった。会社の受付ロビーで大声を出されて。落ち着いて話しましょうと言ったらビンタされました。彼女はそのまま、今度は私の夫の勤務先に行き、夫を呼び出して喫茶店で話したようです。証拠写真も夫に渡した。妻は自身の弟を使って、彼と私を尾行させたんです」 　帰宅した夫に写真を突きつけられ、平手打ちされた。オレのプライドはズタズタだと言われた。 「夫は私の気持ちや愛情などどうでもよかったんですね。自分のプライドだけが問題だった。以前からのこともあるので離婚に異存はなかったから、そのまま私は荷物をまとめて家を出ました」 　ところがそれきり、彼とは連絡がとれなくなった。携帯に電話しても出ない。着信拒否されているようだった。 「数日後、公衆電話から彼が連絡をくれました。妻にバレたようだ、と。ようだ、ということは彼は詳しいことを知らなかったんでしょう。何かあったかと聞かれたので、なにもないけどさようなら、と言いました」