Entertainment

ダンス界の巨匠が残した「最後の言葉」…アイドルたちから“夏先生”が愛され続けた理由

Snow Manのダンスへ寄せた思い

最後のテレビ出演となった『それ Snow man にやらせて下さい』(2023年4月収録)

 夏さんの最期の「公式の言葉」を見ると、2023年5月4日に更新されたブログ「ありがとうを言いたくて」の記事が目に留まる。その記事の内容は4月28日に放送された『それSnow Manにやらせて下さい』に関する記事だった。  ゴールデン枠進出後、初の放送となった同番組では「9人ダンス日本一決定戦」が開催。Snow Manチームのほかに「世界一の最強小学生チーム」、「日本一の高校ダンス部」「芸能人ダンス選抜チーム」の4チームによって競われ、結果は“1ポイント差”という僅差でSnow Manチームが1位を獲得した。  しかし、この結果には批判の声も巻き起こっていた。僅差で勝利したSnow Manチームの結果に対して「ヤラセではないか」という疑惑の声が上がったのだ。  特に高いスキルとチームワークを見せて視聴者の心を掴んだ「最強小学生チーム」を推す声が少なくなく、結果に対する議論はSNS上で白熱していた。そんな様子を見て、常々「ダンスで世界平和」を掲げてきた夏さんは心を痛め、動いたのだ。 「夏は番組での結果について、なぜSnow Manが1位を獲得したのか、そのパフォーマンスについてしっかりと評価ポイントを明示しながら読者に示そうとしていました。番組では時間の都合上、審査員の講評が十分に放送されなかったことも気にかけていたのです」  ジャンルも異なるダンスパフォーマンスを言葉で的確に評することは難しい作業だろう。実際、ダンスを競う場においては審査員でも「すばらしかった」「表現力がある」「甲乙つけがたい」「あとは好みの差」などと、つい抽象的な言葉にならざるを得ない。しかし、それでは夏さんは視聴者が納得しないことをよくわかっていたようで、自らが審査員を務めたからには誰もが納得する言葉で伝えることが必要だと考えていた。 「夏は『ブログを通してみなさんになぜSnow Manが1位にふさわしかったのか、誰にでもわかる言葉で、深部まで納得させる文章で伝えたい』と言っていました。それがダンスの魅力についても触れるきっかけになればと考えていましたね」

「ダンスで世界平和」が実現した瞬間

夏まゆみ 結果、夏さんがブログを更新した直後からアクセスが殺到。しばらくはサーバーがダウンし、アクセスすることができなくなっていた。それにもかかわらず、夏さんの言葉はファンや番組の視聴者を通して瞬く間に拡散していき、「スッキリした」「胸がいっぱいになった」「ブログを読んで感じたのはただ一言感謝…ありがとうございました」「ブログでの解説、本当に嬉しかったです」など、夏さんへのお礼と称賛の言葉がSNS上にあふれた。  SNS上でお互いを非難しあっていた人たちが、感謝やリスペクトの声に変わっていくその様子は、まさに「ダンスで世界平和」だと表現するにふさわしい光景だった。 「夏のブログを見にきてくれた人にはSnow Manのファンの方だったり、『それスノ』のファンの方だったり、またはアンチと言われる方など、それまでSNSで言い争っていた方がいっせいに閲覧しに集まりました。どう受け止められるのか、本人も不安に思っていましたが、それ以降、SNSでの“ヤラセ疑惑”の声がピタッと止まったのを見て安堵していました」  夏さんのブログに綴られた「最期の言葉」が、SNS上で巻き起こった論争を止め、誰もが納得するものだったことに、あらためて夏さんのダンスへの情熱やダンス界を牽引してきた強い責任感と細やかな配慮があったことが読み取れる。そして何より、自分自身のことではなく、ダンスの素晴らしさを伝える言葉が最期の公式の文章だったことは、いかにも夏さんらしい。
次のページ 
死の間際までブレることのなかった姿勢
1
2
3
4
5
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ