今回の與の告白が潔く、素晴らしかったのは、ひとりの当事者としてだけでなく、作品を発表するアーティストとしての立場からも強く言及している点にある。もしかしたら仕事がなくなるかもしれない。そんな恐怖を度外視しての勇気ある発言なのだ。
「僕も自分らしく生きていこうと、このできごとがきっかけで自分と向き合っていくようになりました」
與が広く訴えようとしているのは、“Self-Love”、あるいは“Self-Care”の視点である。つまり、自分を愛し、自分を大切にすること。「どんなセクシャリティーだとしても、ゆっくり時間をかけて、まずは自分を大切にしてあげてください。自分を愛することが一番です」と丁寧に示してくれている。
この日、與が発表した新曲「Into The Light」の歌詞に耳を傾けよう。特に歌い出し、「I spent so long being these versions of myself」(長い間もう一人の自分を探し続けていた)というフレーズ。與の告白を受けた今、この歌詞の意味合いはあまりにも切実に聴こえる。
20分にもわたって朗読された手紙の一字一句、そしてこの歌詞に込められたメッセージが、どうか多くの人々の心に届いてくれたらと筆者は願うばかりである。
<文/加賀谷健>