Lifestyle
Human

高校生の娘のバイト代も使い込むダメ父。「こいつはヤバい」と親を見つめた女性の壮絶人生を招いたものとは

母が家を出て行ったのは、珠江さんが小学3年生の夏だった。すると監視がゆるくなったからか、父が借金返済のためにとマルチ商法のアムウェイに、つづいて新宗教にも入会した。それらは、父の同級生からの誘いだったという。 「こいずばうっど、もうがっからよ~!(意味:これを売ると、儲かるんだぞ)」 父がうれしそうに、「飲めるほど安全」というフレーズで有名な洗剤を珠江さんに見せる。 親子三代勧誘沼202310「段ボールに囲まれた部屋で、いそいそと商品を並べる父。マルチ商法の知識がない小学生の目から見ても、“ああこいつはもうヤバい”と感じましたね。ほかには、なんちゃらの教祖さまからのありがたいお札とやらを枕の下に敷いて寝たり、パワーが抽入されている水とやらを頭からかぶったり」

娘のバイト代までも…

高校にあがると、珠江さんは自活を目指してバイト三昧になる。しかしそうしたお金も「今日10万払わないと借金取りに殺される」と父親に泣きつかれ、もっていかれてしまう。ギャンブルから発生した借金が、マルチ商法のノルマや新宗教へのお布施でさらにふくれ上がっていたのだ。 「結局私は、半分家出のような形で実家から抜け出し、ひとり暮らしをするようになりました。父は東京へ逃げ、別の家庭と会社を設けたようです。祖父母の家と土地は、親戚が全部買い取ってくれたと聞きますが、交流がないのでその後は知りません」

勧誘沼にハマッた家族からの教訓

家庭が崩壊した根本的な原因は、祖父と父の暴走にあったとしても、ハイエナのごとく過剰な営業行為が、事態を悪化させたのもまた事実だろう。一般に、ちょろいターゲットの名簿は「カモリスト」と呼ばれるが、そうした情報網の存在も感じさせてくれる話である。 親子三代勧誘沼202310「昭和から令和のいままで、さまざまな勧誘の現場を見つづけてきた人生ですが、こんな実家だったので、私自身はそうしたものに心底うんざりしていて、勧誘はされるものの一度も引っかからずにいます」 勧誘がらみでよかったことと言えば、それくらい! と珠江さんは豪快に笑う。常に沼からおいでおいでされる、壮絶人生である。 <取材・文/山田ノジル>
山田ノジル
自然派、○○ヒーリング、マルチ商法、フェムケア、妊活、〇〇育児。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のない謎物件をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。twitter:@YamadaNojiru
1
2
3
4
Cxense Recommend widget
自分が身内が友人が沼ったご体験談を募集中です。当連載における沼とは、科学的根拠のない健康法やマルチ商法、過激なフェムケアや自然派思想など、主に健康問題に関わるものにハマることを示します。「女子SPA!」のお問い合わせフォームより、ぜひお気軽にご連絡ください(お返事に時間を頂戴する場合もあります)。
あなたにおすすめ